辞めると言われたが、給料は次の締め日にまとめて払うつもりでいる。
そこがいちばん期限の短いところです。
スタッフが辞めたら、期限の違う手続きが5つ同時に動き出します。
いちばん短いのは賃金で、請求されたら7日以内です。
締め日を待って払う、という扱いにはなりません。
この記事では、退職の手続きを期限の短い順に条文で整理します。
読み終えたら、退職日から数えて何日目に何を出すかを、順番どおりに進められます。
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退職の手続きは期限が5つバラバラに走る
根拠になる法律が別々なので、期限もそろっていません。
先に全体を並べます。
起算点も「請求があったとき」と「事実があった日」で違います。
| やること | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 賃金・金品の返還 | 請求があってから7日以内 | 労働基準法23条1項 |
| 社会保険の資格喪失届 | 事実があった日から5日以内 | 厚生年金保険法施行規則22条1項 |
| 雇用保険の資格喪失届 | 事実のあった日の翌日から10日以内 | 雇用保険法施行規則7条1項 |
| 源泉徴収票の交付 | 退職の日以後1月以内 | 所得税法226条1項 |
| 退職時等の証明 | 請求されたら遅滞なく | 労働基準法22条1項 |
このうち2つは本人から請求されて初めて動くもので、残り3つは辞めた事実だけで動きます。

ここまでは本人が辞める場合です。店側からシフトを外す形にすると、解雇や雇止めの問題になります。線引きはシフトを入れないのは解雇?にまとめました。
退職した人の賃金は締め日を待たない
いちばん短く、いちばん揉めるのがここです。
労働基準法23条1項の条文を読みます。
使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。
労働基準法23条1項(金品の返還)
請求されたときだけ7日になる
条文は「権利者の請求があつた場合においては」と条件を付けています。
請求がなければ、通常の賃金支払日に払って構いません。
ただし「今すぐ払ってほしい」と言われた時点で、7日の期限が動き出します。
その日で辞めるスタッフが多い店ほど、この条文が効きます。
揉めている分も「異議のない部分」は払う
23条2項が続きを決めています。
賃金や金品に争いがある場合、使用者は異議のない部分を7日の期間中に支払わなければなりません。
控除額で揉めているからといって、全額を止めることはできません。
そもそも賃金からの控除には労働基準法24条1項ただし書の労使協定が要ります。
売掛の回収を理由に止められない
夜のお店で起きやすいのが、未回収の売掛を理由に給与を止める形です。
23条2項が「異議のない部分」を求めている以上、この扱いは取れません。
売掛をキャストに負わせること自体の問題はキャストの売掛で整理しました。
罰金やペナルティの上限は就業規則は10人未満でも必要かで扱っています。
退職までに残っている年次有給休暇は、シフト制でも所定労働日数から日数が決まります。数え方はシフト制の有給休暇にまとめました。
雇用保険の資格喪失届は10日、社会保険は5日
役所に出す届出は2種類あります。
提出先も期限も別なので、まとめて覚えると間違えます。
短いのは社会保険のほうです。
社会保険は事実があった日から5日以内
厚生年金保険法施行規則22条1項は、資格喪失の届出を当該事実があつた日から5日以内としています。
様式は第十一号で、提出先は日本年金機構です。
同条3項により、協会けんぽの健康保険の資格喪失と同時であれば併記できます。
そもそも店が社会保険の適用事業所かどうかは飲食店の社会保険の加入条件で扱っています。
雇用保険は翌日から起算して10日以内
雇用保険法施行規則7条1項は、当該事実のあつた日の翌日から起算して10日以内としています。
社会保険が「当日から」、雇用保険が「翌日から」で、起算点も違います。
提出先は事業所の所在地を管轄するハローワークです。
離職なら離職証明書と賃金台帳を添える
同じ7条1項の後段が、添付書類を決めています。
資格を失った原因が離職であるときは、雇用保険被保険者離職証明書(様式第五号)と、離職の日前の賃金の額を証明できる書類を添えます。
この「賃金の額を証明できる書類」が賃金台帳です。
深夜割増の欄まで埋まっていないと出せないので、給与明細テンプレートで普段から形を整えておいてください。
退職者の源泉徴収票は1か月以内に渡す
年末にまとめて作るもの、と思われがちです。
年の途中で辞めた人は違います。
所得税法226条1項が括弧書きで例外を置いています。
括弧書きの「退職の日以後1月以内」
226条1項は、源泉徴収票を2通作って翌年1月31日までに1通を税務署長へ、もう1通を本人へ交付すると定めています。
その期限の括弧の中に「年の中途において退職した居住者については、その退職の日以後一月以内」と書かれています。
4月に辞めた人の分を年末まで置いておくと、期限を8か月過ぎることになります。
交付しないことには罰則がある
所得税法242条6号が、源泉徴収票を交付の期限までに交付しなかった者を対象にしています。
罰則は1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。
もらえなかった側が税務署に届け出る手続きもあります。
その流れは源泉徴収票がもらえないときで扱っています。
報酬で払っていたなら源泉徴収票ではない
業務委託のキャストには源泉徴収票を作りません。
作るのは支払調書で、こちらは本人への交付義務がありません。
提出の範囲も年50万円超と違うので、ホステス報酬の支払調書を確認してください。
退職したあとも名簿と台帳は残す
手続きが終わっても、記録は残します。
保存期間は法律ごとに別で、起算点も違います。
行を削除してしまうと戻せません。
風営法の従業者名簿は退職日から3年
風営法施行規則106条は「その従業者が退職した日から起算して三年を経過する日まで」名簿を備えておくことを求めています。
起算点が退職の日なので、辞めた人ほど管理が要ります。
退職年月日を記入して、行はそのまま残してください。
様式は従業者名簿テンプレートで配布しています。
労働関係の書類は当分の間3年
労働基準法109条は、労働者名簿・賃金台帳・雇入れ・解雇・賃金その他の重要な書類を5年間保存するとしています。
ただし同法附則143条1項で、当分の間「三年間」と読み替えられます。
同じ附則が、賃金請求権の時効も当分の間3年としています。
退職の証明には請求されたことしか書かない
労働基準法22条1項は、使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由について証明書を請求されたら、遅滞なく交付するとしています。
注意は3項です。
労働者の請求しない事項を記入してはならないと定められています。
頼まれていない退職理由を書き添えると、それ自体が違反になります。
賃金台帳は残すものですが、給与明細は支払のたびにその場で渡すものです。渡していないときに何が起きるかは給与明細がもらえないのは違法?にまとめました。
まとめ:退職の手続きは短い順に片づける
- 賃金:請求があったら7日以内。争いがあっても異議のない部分は払う
- 社会保険:事実があった日から5日以内(様式第十一号)
- 雇用保険:事実のあった日の翌日から10日以内。離職なら離職証明書と賃金台帳を添える
- 源泉徴収票:年の途中の退職なら退職の日以後1月以内。未交付は1年以下・50万円以下
- 証明書:請求されたら遅滞なく。請求されていない事項は書かない
- 保存:従業者名簿は退職日から3年、労働関係の書類は当分の間3年
賃金台帳が普段から整っていれば、5つのうち3つはその場で終わります。
毎月の計算の流れは給与計算のやり方にまとめています。
外国人が辞めたときはハローワークへの届出も要ります(外国人を雇えるか)。
この記事は条文をもとにした一般的な整理です。
個別の届出の要否や様式は事情によって変わるため、具体的な手続きは所轄の労働基準監督署・ハローワーク・年金事務所に確認してください。
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この記事で参照した一次情報
- 労働基準法(22条・23条・24条・109条・附則143条)
- 所得税法(226条・242条)
- 雇用保険法施行規則(7条)
- 厚生年金保険法施行規則(22条)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則(106条)

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