「うちはシフト制で所定労働日数を決めていないから、有給は出せない」。
そう説明している店も、そう言われて引き下がっている人も、まだ少なくありません。
シフト制でも有給休暇は発生します。
雇入れの日から6か月間続けて働き、全労働日の8割以上出勤していれば、労働基準法39条1項によって当然に与えなければなりません。
週1日しか入っていないアルバイトでも同じです。
厚生労働省は「所定労働日数が決まっていないから出せない」という説明を明確に否定していて、2026年6月19日に改正された留意事項には日数の数え方まで書かれました。
この記事では、有給が発生する要件、シフト制での日数の数え方、そして付与のしかたを順に見ていきます。
読み終えたら、自分の店のスタッフに何日付与しなければならないかを、その場で計算できます。
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シフト制でも有給休暇は発生する
まず条文です。
労働基準法39条1項は、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、10労働日の有給休暇を与えなければならないとしています。
雇用形態の区別はありません。
「決めていないから出せない」は通らない
厚生労働省の「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」も、契約期間が6か月未満でも更新されて6か月以上になっていれば要件を満たすとしています。
そのうえで、こう明記しています。
あらかじめ所定労働日数を定めていない場合に、そのことを理由にシフト制労働者に年次有給休暇を付与しないことは認められません。
厚生労働省 いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項(令和8年6月19日改正)
「決めていないから出せない」は通りません。
決めていない場合の数え方も同じ資料に書かれているので、あとで紹介します。
シフト制の有給は所定労働日数で日数が決まる
次に日数です。
週の所定労働時間が30時間以上の人は、日数にかかわらず通常の付与になります(39条1項・2項)。
| 継続勤務年数 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
週4日以下・30時間未満は比例付与になる
一方、週の所定労働日数が4日以下(または年間216日以下)で、かつ週の所定労働時間が30時間未満の人は、日数に応じた比例付与になります(39条3項)。
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| 週の所定労働日数 | 年間の所定労働日数 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4日 | 169〜216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 121〜168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 2日 | 73〜120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 1日 | 48〜72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
ここで使う所定労働日数は、留意事項によれば基準日(継続勤務6か月経過日から1年ごとの各期間の初日)に予定されている1週間の所定労働日数です。
週以外の期間で決まっている場合は1年間の所定労働日数を使います。
シフト制で日数が決まっていないときの有給の数え方
ここが2026年6月の改正で追記された部分です。
所定労働日数を算出しがたい場合の代わりの数え方が示されました。

- 雇入れ6か月経過後の付与 … 雇入れから6か月間の労働日数の実績を2倍した日数
- 雇入れ1年6か月経過後以降の付与 … 前年の労働日数の実績
実績から数えるとどうなるか
たとえば入店から6か月で48日出勤していれば、2倍して96日。
上の表の「年間73〜120日」に当たるので、付与日数は3日という数え方になります。
この方法は実績の日数を使うので、勤怠の記録が残っていないと計算できません。
留意事項は同じ箇所で「実際に働く日数と、所定労働日数が乖離しないようにすることが望まれます」「使用者の都合で一方的に所定労働日数を増減させることは認められません」とも書いています。
記録の残し方は勤怠管理のエクセルテンプレートを使ってください。
シフト制で有給を取った日の賃金はいくらか
日数の次は金額です。
労働基準法39条9項は、有給休暇の期間について就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、次のいずれかを支払うと定めています。
- 平均賃金
- 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
- 健康保険の標準報酬月額の30分の1に相当する額(この方法は労使協定が必要)
時給制は「時給×その日の所定労働時間」
実務でよく使うのは2つめです。
留意事項は、シフト制の場合の具体的な出し方をこう書いています。
| 賃金の決まり方 | 有給1日あたりに払う額 |
|---|---|
| 時間給 | その金額に、有給取得日における所定労働時間として定められている労働時間を掛けた額 |
| 日給 | その金額 |
時給1,500円で、その日のシフトが5時間なら7,500円です。
どの方法で払うかは就業規則などで先に決めておく必要があります。
その日ごとに有利なほうを選ぶ、という運用はできません。
なお、有給の日は労働していないので深夜割増はつきません。
逆に、働いていないように見えても労働時間になるのが手待ち時間です(手待ち時間は休憩にならない)。
通常の勤務日との違いは給与計算のやり方で整理しています。
有給を年5日取らせる義務と罰則
渡して終わりではありません。
労働基準法39条7項は、付与日数が10労働日以上の人について、そのうち5日を基準日から1年以内に時季を定めて取得させなければならないと定めています。
本人が請求するのを待つのではなく、店から時季を指定する義務です。
週4日勤務は3年6か月で10日に届く
比例付与の表を見ると、週4日勤務なら3年6か月で10日に到達します。
パート・アルバイトだから関係ない、ということにはなりません。
罰則は39条7項だけ別の条文にある
罰則は違反した条文で分かれています。
ここを混同している解説が多い部分です。
| 違反の内容 | 罰則 | 根拠 |
|---|---|---|
| そもそも有給を与えない、請求した時季に与えない | 6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 | 労基法119条1号(39条のうち7項を除く部分) |
| 年5日を取得させなかった | 30万円以下の罰金 | 労基法120条1号(39条7項) |
119条1号の対象から「第三十九条第七項」だけが外され、120条1号に移されている形です。
どちらも罰則があることに変わりはありません。
シフト制の有給で夜の店がやりがちな間違い
最後に、実際によく見かける取り違えを挙げます。
どれも「知らなかった」で起きるものです。
- シフト制だから有給はないと説明する → 6か月・8割で当然に発生します
- 有給を使う日をシフトに入れず「元から休みの日」として処理する → 労働義務のある日でないと有給になりません
- 有給の申出を「人がいないから」と毎回断る → 39条5項ただし書の時季変更権は、事業の正常な運営を妨げる場合に別の日へ変えるものです
- 時給×5時間ではなく一律で低い額を払う → 支払方法は先に決めておく必要があります
- 辞めるときにまとめて請求されて慌てる → 記録がないと日数の計算自体ができません
2つめが特に多い形です。
シフトを組む段階で休みにしてしまうと、その日は所定労働日ではなくなるため有給を取ったことになりません。
確定したシフトを店の都合で動かすことの問題はシフトの一方的な変更は違法?にまとめました。
労働条件通知書の書き方は労働条件通知書のテンプレート、シフト表そのものはシフト表のテンプレートを配布しています。
まとめ|シフト制の有給休暇で外さない点
- シフト制でも6か月・全労働日の8割以上出勤で発生する(労基法39条1項)
- 週4日以下かつ週30時間未満なら比例付与。週1日でも6か月で1日発生する
- 所定労働日数を定めていないことを理由に付与しないのは認められない
- 算出しがたい場合は、6か月の労働日数の実績を2倍。以後は前年の実績を使う
- 賃金は平均賃金・通常の賃金・標準報酬月額の30分の1のいずれか。先に就業規則等で決めておく
- 時給制なら「時給×その日の所定労働時間」。時給1,500円で5時間なら7,500円
- 付与日数10日以上なら年5日を時季指定して取らせる(39条7項)。週4日勤務は3年6か月で到達する
- 罰則は39条7項が120条1号(30万円以下)、それ以外が119条1号(6月以下の拘禁刑または30万円以下)
- 実績で数える場面が多いので、勤怠の記録がないと計算できない
この記事は条文と厚生労働省の公表資料をもとにした一般的な整理です。
継続勤務や出勤率の判定は個別の事情で結論が変わります。
判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。
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この記事で参照した一次情報
- 労働基準法(39条1項・2項・3項・5項・7項・9項、119条1号、120条1号)
- 厚生労働省 いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項(令和8年6月19日改正・PDF)
- 厚生労働省 いわゆる「シフト制」について

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