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スナックの開業資金|1客席あたりの実額と居抜きの罠

スナックの開業資金の記事のアイキャッチ。1客席あたりの実額と居抜きの注意点を扱う

居抜きのスナックを紹介されて、造作譲渡料と保証金の額までは聞いた。

ただ、あと何を足せば開けられるのかが見えない。

スナックの開業資金は、総額を先に置くのではなく席数から逆算すると決まります。

日本政策金融公庫の経営指標には「1客席当たり売上高」という項目があり、遊興飲食店のなかでスナックの表にだけ255万9千円という値が入っています。

バー、キャバレー、ナイトクラブの表は、この項目が空欄です。

この記事では、公庫が公表している開業費用の実額と、席数から年商を逆算する手順、居抜きの造作譲渡料の税務、カラオケと家族の給与を整理します。

読み終えたら、何席の店をいくらで作り、開けてから毎月いくら出ていくかを自分の数字で置けます。

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目次

スナックの開業資金は中央値600万円から考える

金額の出どころとして使えるのは、公庫が毎年公表している新規開業実態調査です。

融資を受けて開業した事業者に、開業からおおむね1年以内の時点でアンケートを取ったものです。

ここで見るのは平均値ではありません。

開業費用は平均975万円・中央値600万円

2025年度調査の開業費用は、平均値975万円に対して中央値600万円です。

「250万円未満」が20.1%、「250万〜500万円未満」が21.7%で、合わせて4割を超えます。

カウンターと小上がりだけの店なら、近いのは中央値の600万円のほうです。

業種別の開業費用は公表されていない

この調査に「スナックの開業費用」という内訳はありません。

公表されているのは全業種の分布で、飲食店・宿泊業は開業業種の14.5%という構成比だけです。

「スナックの開業資金は◯◯万円」と業種別の平均を出している記事は、出どころを確かめてください。

調達額のほうが開業費用より244万円多い

同じ調査の資金調達額は平均1,219万円で、開業費用の平均975万円より244万円多くなっています。

内訳は金融機関等からの借り入れが827万円で67.9%、自己資金が279万円で22.9%です。

差額は店を作る費用ではなく、常連がつくまでの家賃と人件費に充てる部分です。

スナックの開業資金は席数から逆算できる

ここが、このページでいちばん使える部分です。

公庫の「小企業の経営指標調査」は業種ごとに30以上の指標を出していて、そのなかに1客席当たり売上高があります。

この項目に値が入っている業種は限られています。

1客席当たり売上高はスナックの表だけに入っている

スナックの表の1客席当たり売上高は平均255万9千円、中央値202万4千円です。

同じ調査のバー、キャバレー、ナイトクラブの表では、この項目は空欄になっています。

つまり席数から年商のあたりを付けられるのは、スナックの側だけです。

10席なら年商2,559万円・月商213万円の水準

平均の255万9千円を使うと、10席で年商2,559万円、月商213万円という水準になります。

中央値の202万4千円なら、10席で年商2,024万円、月商168万円です。

席数を決めるときは、この幅のどこを取るかで内装にかけられる額が変わります。

ほかの平均値と掛け合わせてはいけない

この調査の平均値は、企業ごとに計算した比率や単価を平均したものです。

店舗面積の平均71.2平方メートルと、店舗面積3.3平方メートル当たり売上高257万2千円を掛けても、1客席当たりから出した年商には一致しません。

使い方は「席数を1つ動かすといくら変わるか」の目安までにとどめてください。

調査対象が7社しかない

もっとも大事な但し書きがこれです。

指標平均値(7社)中央値
1客席当たり売上高255万9千円202万4千円
従業者1人当たり売上高1,375万5千円1,418万9千円
従業者1人当たり人件費258万7千円247万円
店舗面積3.3平方メートル当たり売上高257万2千円254万1千円
1企業当たり店舗面積71.2平方メートル67.7平方メートル
損益分岐点比率94.5%96.2%
自己資本比率-9.6%31.6%
日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」スナック(調査対象数7社・黒字かつ自己資本プラス企業4社)。

7社の平均なので、自店の目標に据えるには弱い数字です。

母数の大きいバー側の数字と見比べる手順はバーの原価率に書きました。

スナックの開業資金は接待をするかで分かれる

スナックという業態の区分は、法律にはありません。

実務の分岐は、風営法の許可を取るか届出で済ませるかの1点だけです。

この分岐が開業資金にも営業時間にも効きます。

統計のスナックは許可を得ていない店を指す

先ほどの7社の表には「風営適正化法に定める許可を得ていないもの」という注記が付いています。

同じ調査のバー、キャバレー、ナイトクラブは合計80社で、うち73社が「許可を得ているもの」です。

公庫は同じ業態を許可の有無だけで割り、許可のないほうを「スナック」と呼んでいます。

接待をするなら許可で午前0時に閉める

客の近くにはべって継続して談笑やお酌をするなら、風営法2条1項1号の風俗営業になります。

許可を取ると13条1項で午前0時から午前6時までの営業が禁止されます。

接待をしない設計にすれば33条1項の届出で深夜も開けられます。

許可と届出の全体はスナック開業の手順で分けて書いています。

管理者講習は1時間につき650円が標準

許可を取ると営業所ごとに管理者を選任し、講習を受けることになります。

地方公共団体の手数料の標準に関する政令は、この講習を1時間につき650円としています。

一方で風俗営業の許可申請そのものの手数料は同じ政令に定めがなく、都道府県の条例で決まります。

政令に標準額があるものの一覧は風営法の許可にまとめました。

スナックの開業資金で居抜きは安く見えて後に効く

居抜きは初期費用が下がるので、真っ先に検討する選択です。

ただし払ったお金の落とし方が、開業費とは別のルールになります。

ここを知らないと、初年度の申告で思ったより経費が立ちません。

造作譲渡料は開業費ではない

所得税法施行令7条1項は繰延資産を号で分けています。

1号が開業費で、3号ロが「資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用」です。

礼金や造作譲渡料は3号のほうに入り、同令137条1項2号で支出の効果が及ぶ期間の月数で按分します。

開業費は落とす年を選べる

1号の開業費には、同令137条3項という別の定めがあります。

繰延資産の額の範囲内で確定申告書に記載した金額を、その年の必要経費にできる内容です。

開業費は初年度に全額落としても、黒字になった年まで残しても条文の範囲内です。

払ったもの区分落とし方
開業前の求人・研修・挨拶まわり施行令7条1項1号(開業費)金額を自分で決めて申告できる
礼金・造作譲渡料同7条1項3号ロ効果の及ぶ期間で按分する
保証金・敷金返還される預け金経費にならない
10万円未満のグラス・什器同138条買った年に全額必要経費
20万円未満の備品同139条3年で均等に落とす選択もできる
所得税法施行令7条・137条・138条・139条より。実際の区分は契約の内容で変わるため顧問税理士に確認する。

保証金は開業資金だが経費ではない

保証金は返ってくる預け金なので、払った年の経費になりません。

スナックは保証金が高めに設定されることがあり、ここが資金計画でいちばん重くなります。

用意する現金としては必要で、経費としては立たない費目だと分けて考えてください。

スナックの開業資金には毎月のカラオケと人が乗る

見積もりから抜けやすいのは、開店してから毎月出ていくお金です。

スナックはここにカラオケと人の分が乗ります。

どちらも契約や届出が先に必要なので、開ける前に押さえておくものです。

カラオケのリース料と著作権使用料は別のもの

機器のリース料と、音楽を使うことへの著作権使用料は別に発生します。

使用料は客席面積と月の営業日数で決まる仕組みで、金額の出し方はスナックのカラオケの著作権使用料にまとめました。

リースは契約期間が数年に及ぶことがあるので、開業資金ではなく毎月の固定費として置いてください。

ママや家族の給与は届出をした年から経費になる

家族に払う給与は、青色事業専従者給与に関する届出書を出した年から必要経費になります。

開業した年に出し忘れると、その年は経費に入れられません。

何が経費になるかの線引きはスナック経営の経費で条文ごとに分けています。

開けた月から源泉徴収の義務が始まる

人を雇って給与を払うなら、開業の時点で給与支払事務所等の開設届出書を出します。

22時以降に人を立てるなら、最低賃金に深夜の割増を乗せた額が支払いの下限になります。

開業資金として持つ運転資金の額は、この人件費の見積もりで決まります。

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まとめ|スナックの開業資金で外さない点

  1. 中央値で組む:公庫の開業費用は平均975万円より中央値600万円。業種別の内訳は公表されていない
  2. 席数から逆算する:1客席当たり売上高は平均255万9千円・中央値202万4千円。10席なら月商168万〜213万円の水準
  3. 7社の数字だと知って使う:スナックの表は調査対象7社。ほかの平均値と掛け合わせない
  4. 接待をするかを先に決める:許可を取ると午前0時で閉める。届出なら深夜も開けられる
  5. 居抜きの造作譲渡料は年を選べない:開業費は施行令137条3項で選べるが、礼金と造作は按分になる
  6. 毎月の固定費を先に置く:カラオケのリースと著作権使用料、家族の給与の届出、深夜の割増

開業資金の見積もりで最後まで読めないのは、開けてからの人件費です。

席数が決まればシフトの形も決まるので、想定の人数で一度計算しておくと運転資金の額が出ます。

なお業種別の指標は調査対象数が少ないものを含みます。

自店の資金計画は顧問税理士と事業計画で詰めてください。

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