居抜きの物件を見つけて、内装の見積もりまでは取った。
あとは自己資金をいくら用意すればいいのかが分からなくて、公庫に行く前で止まっている。
バーの開業資金は、平均の975万円ではなく中央値の600万円のほうで組みます。
日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査では、開業費用の平均値975万円に対して中央値は600万円で、375万円ひらいています。
同じ調査で、250万円未満で開業した人が20.1%います。
この記事では、公庫が公表している開業費用と資金調達の実額、バー固有の許可でかかる費用、そして払った開業資金を税務でどう落とすかを整理します。
読み終えたら、自分の見積もりのうちいくらを自己資金で持ち、いくらを借りるかを数字で決められます。
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バーの開業資金は平均975万円より中央値600万円で見る
公庫は毎年、融資を受けて開業した人にアンケートを取り、開業費用の分布まで公表しています。
2025年度調査は2025年12月5日に公表されたもので、回答は開業からおおむね1年以内の事業者です。
ここで最初に見るべきなのは平均値ではありません。
平均値と中央値が375万円ひらいている
開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円です。
平均値は、数千万円を投じた少数の開業者に引っ張られて上振れします。
カウンター中心の小さなバーを開けるなら、自分に近いのは中央値の600万円のほうです。
5社に1社は250万円未満で開業している
分布を見ると「250万円未満」が20.1%、「250万〜500万円未満」が21.7%で、合わせて4割を超えます。
| 項目 | 2025年度 |
|---|---|
| 開業費用の平均値 | 975万円 |
| 開業費用の中央値 | 600万円 |
| 「250万円未満」の割合 | 20.1% |
| 「250万〜500万円未満」の割合 | 21.7% |
| 500万円未満の合計 | 41.8% |
500万円未満で開けている人が4割いるという事実は、見積もりを削る余地がまだあることを示します。
開業費用は長期的に少額化している
この調査は1991年から続いていて、公庫は開業費用が長期的に少額化の傾向にあると書いています。
「1,000万〜2,000万円未満」や「2,000万円以上」の割合も、長期的にみると低下傾向にあるとされています。
10年以上前の相場を書いた記事を基準にすると、必要額を多く見積もることになります。
同じ調査には、開業した人の経験年数も出ています。未経験で開けている人の割合はバー開業と未経験にまとめました。
バーの開業資金は調達額のほうが244万円多い
同じ調査には、開業費用とは別に「実際にいくら調達したか」の数字があります。
この2つを並べると、開業費用だけを用意して開けてはいけない理由が分かります。
資金調達額の平均は1,219万円
開業時の資金調達額は平均1,219万円でした。
開業費用の平均975万円との差は244万円です。
開業した人は、店を作る費用のほかに平均244万円を持って開けています。
借り入れが827万円で調達額の67.9%
調達先の内訳は、金融機関等からの借り入れが平均827万円で67.9%を占めます。
| 調達先 | 平均額 | 調達額に占める割合 |
|---|---|---|
| 金融機関等からの借り入れ | 827万円 | 67.9% |
| 自己資金 | 279万円 | 22.9% |
| 配偶者・親・兄弟・親戚 | 53万円 | − |
| 友人・知人等 | 41万円 | − |
| その他 | 19万円 | − |
| 合計 | 1,219万円 | 100% |
借り入れと自己資金の2つで、調達額の90.7%になります。
差額の244万円が開業後の運転資金になる
バーは常連がつくまで時間がかかる業態です。
売上が読めない数か月のあいだも、家賃と人件費は同じ額で出ていきます。
この時期にいくら必要かは、開業後にどれだけ人を置くかで決まります。
バーの収支の組み立てはバー経営が難しいと感じたときに見る数字にまとめました。
バーの開業資金で「自己資金3割」は公庫の条件ではない
「開業資金の3分の1は自己資金が必要」という説明をよく見ます。
公庫の融資制度のページと公式のよくあるご質問を読むと、そうは書かれていません。
金額の要件ではなく、計画の中身を見るという書き方になっています。
公庫は「平均で2割程度」と書いている
公庫の創業支援ページのよくあるご質問には、次のように書かれています。
自己資金は重要な要素のひとつですが、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要になります。
創業資金総額に占める自己資金の割合は平均で2割程度となっています。
日本政策金融公庫「START 政策金融公庫の創業支援」Q&A
公庫自身が示している水準は3割ではなく2割程度で、実態調査の22.9%とも一致します。
ただしこれは最低ラインの保証ではないので、自己資金が薄いぶんは計画で説明できるようにしてください。
創業期は原則として無担保・無保証人
同じQ&Aに「創業期の方(新たに事業を始める方や事業開始後税務申告を2期終えていない方)は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度をご利用いただけます」と書かれています。
融資までの期間は「平均的には、3週間程度です」とされています。
物件の契約日から逆算して動かないと、申し込みが間に合いません。
融資限度額7,200万円で運転資金は10年以内
創業で使う制度は「新規開業・スタートアップ支援資金」です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ご利用いただける方 | 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間(設備資金) | 20年以内(うち据置期間5年以内) |
| 返済期間(運転資金) | 10年以内(うち据置期間5年以内) |
| 担保・保証人 | 希望を伺いながら相談 |
据置期間を使えば、開業直後の数か月は元金の返済を後ろにずらせます。
バーの開業資金は許可のルートで工事費が動く
ここからがバー固有の部分です。
同じ広さ・同じ立地でも、風営法のどのルートで開けるかで工事の内容と営業できる時間が変わります。
先に決めておかないと、内装をやり直すことになります。
接待をしないなら届出だけで済む
カウンターで注文に応じて酒を出すだけなら、風俗営業の許可は要りません。
午前0時を越えて酒を出すなら、風営法33条1項の深夜酒類提供飲食店営業の届出をします。
届出の中身は深夜酒類提供飲食店営業の届出にまとめました。
許可と違って審査がないので、費用も日数も軽くなります。
照度10ルクス以下と客席5平方メートル以下は許可になる
接待をしなくても、設備のつくり方で許可の対象になります。
- 2条1項1号:接待をして客に遊興または飲食をさせる営業
- 2条1項2号:客席の照度を10ルクス以下にして営業するもの
- 2条1項3号:見通しが困難で、広さが5平方メートル以下の客席を設けるもの
暗い照明や半個室のブースを入れる設計にすると、2号か3号で許可が必要になります。
許可の3ルートはバーの開業に要る許可と届出で分けて書いています。
許可を取ると午前0時で閉めることになる
風俗営業の許可を取ると、13条1項で午前0時から午前6時までの営業が禁止されます。
これは工事費ではなく売上の側に効く条件です。
深夜の売上を前提にした資金計画を立てているなら、接待をしない設計にするかどうかを先に決めてください。
許可の手数料は所在地の条例で確認する
許可の手数料を「24,000円」と書いている記事が多いのですが、出どころを確かめると少し違います。
地方公共団体の手数料の標準に関する政令の別表に、3条1項の許可申請手数料は載っていません。
24,000円は特定遊興飲食店営業の許可申請の額で、風俗営業の許可申請の額は所在地の条例で決まります。
政令に標準額があるものの一覧は風営法の許可にまとめました。
許可を取るかどうかは、講習と選任の手間にもそのまま効きます。資格ごとの要否はバー開業に必要な資格にまとめました。
バーの開業資金は開業費として繰延資産になる
ここは競合の記事がほとんど触れていない部分です。
開ける前に払ったお金は、払った年にまとめて経費になるわけではありません。
そのかわり、いつ落とすかを自分で選べる費目があります。
開業費は落とす年を自分で決められる
所得税法施行令7条1項1号は、開業費を「事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用」として繰延資産に位置づけています。
原則の償却は同令137条1項1号で、繰延資産の額を60で割って業務を行っていた月数を掛ける計算です。
ただし同条3項に、確定申告書に記載した金額をその年の必要経費にできる定めがあります。
居住者が、第一項第一号に掲げる繰延資産につきその年分の……事業所得の金額……の計算上必要経費に算入すべき金額として、当該繰延資産の額の範囲内の金額をその年分の確定申告書に記載した場合には、同号に掲げる金額は、同号の規定にかかわらず、当該金額として記載された金額とする。
所得税法施行令137条3項
開業初年度に全額落としても、0円にして黒字化した年に落としても、どちらも条文の範囲内です。
礼金と造作譲渡料は同じようには落とせない
同じ施行令7条1項でも、3号ロは「資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用」を別に立てています。
礼金や居抜きの造作譲渡料はこちらに入ります。
3号の繰延資産は137条1項2号で「支出の効果の及ぶ期間の月数」で按分する計算になり、開業費のように年を選べません。
| 費目 | 根拠 | 落とし方 |
|---|---|---|
| 開業前の求人費・挨拶まわり・研修費など | 施行令7条1項1号(開業費) | 金額を自分で決めて申告できる |
| 礼金・造作譲渡料 | 同7条1項3号ロ | 効果の及ぶ期間で按分する |
| 保証金・敷金 | 返還される預け金 | 経費にならない |
10万円未満の什器は買った年に全額落とせる
グラスや椅子などは、取得価額が10万円未満なら施行令138条でその年の必要経費になります。
20万円未満なら139条の一括償却資産として3年で落とす選択もできます。
備品の買い方は開業後の経費の通り方にも関わります。
経費の線引きは夜の店の経費になるもの・ならないもので条文ごとに分けています。
バーの開業資金を回収できるかは開業後の数字で決まる
同じ公庫調査には、開業した人がいまどうなっているかの数字もあります。
資金計画を立てるときは、こちらを先に見ておくほうが安全です。
開業者の月商は100万円未満が39.5%
調査時点の月商は「100万円未満」が39.5%、「100万〜500万円未満」が44.2%でした。
開業時の平均従業者数は2.8人で、3年連続で3人を下回っています。
月商100万円台で人を2人置く前提なら、原価と人件費の比率は先に押さえておいてください。
バーの原価の水準はバーの原価率にまとめました。
予想した月商に届かない人が4割いる
予想月商達成率は「125%以上」が34.2%、「100〜125%未満」が24.5%で、約6割が予想を達成しています。
裏を返すと、4割は自分が立てた月商に届いていません。
据置期間を使うかどうかは、この4割に入った場合を想定して決めるものです。
黒字基調は67.0%、赤字基調は33.0%
現在の採算状況は黒字基調が67.0%、赤字基調が33.0%です。
1週間当たりの労働時間は「50時間以上」が49.8%を占めます。
この数字は融資を受けて開業した事業者の回答なので、業種別の内訳は公表されていません。
自店の見通しは顧問税理士と事業計画で詰めてください。
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はじめてご利用の店舗は、次の締めが終わるまで無料です。カードの登録は要りません。
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まとめ|バーの開業資金で外さない点
- 中央値で組む:平均975万円ではなく中央値600万円。250万円未満で開けている人が20.1%いる
- 店を作る費用の外に持つ:調達額の平均1,219万円は開業費用より244万円多い
- 自己資金は2割程度:公庫は3割と書いていない。実態調査では279万円・22.9%
- 許可のルートを先に決める:照度10ルクス以下や5平方メートル以下の客席は許可になり、許可を取ると午前0時で閉める
- 開業費は落とす年を選ぶ:施行令137条3項。礼金と造作譲渡料は選べない
- 4割は月商予想に届かない:据置期間はその前提で使う
開業資金の見積もりで最後まで読めないのは、開けてからの人件費です。
深夜に人を立てるバーは、同じ時給でも22時以降は割増が乗って支払額が変わります。
開ける前に一度、想定のシフトで計算しておくと、運転資金をいくら持つかの答えが出ます。
この記事で参照した一次情報
- 日本政策金融公庫「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月5日公表)
- 同「新規開業・スタートアップ支援資金」
- 同「START 政策金融公庫の創業支援」Q&A
- 所得税法施行令(7条・137条・138条・139条)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(2条1項・13条1項・33条1項)
- 地方公共団体の手数料の標準に関する政令
- 警視庁「風俗営業、特定遊興飲食店営業許可申請」

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