バーは届出だけで開けると聞いていたのに、内装や接客のことを調べるほど風営法の話が出てくる。
開業前のいちばん不安なところです。
バーには、意図せず風営法の許可対象になるルートが3つあります。
接待をすること、照度を10ルクス以下にすること、見通しが困難で5平方メートル以下の客席を作ることです。
後ろの2つは、雰囲気を作ろうとした結果として踏みやすい部分です。
そして許可を取ると、原則として深夜0時で営業を終えることになります。
この記事では、必要な手続きと、この3つのルートを条文で整理します。
読み終えたら、自分の店の構想が届出で足りるのか許可が要るのかを、内装を決める前に判断できます。
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バーの開業に要る手続き
まず全体像です。
飲食店なので保健所の許可が要り、深夜に酒を出すなら警察への届出が加わります。
そのうえで、あとに述べる3つのルートに当たらないかを確かめる、という順序になります。
| 手続き | 窓口 | 要否 |
|---|---|---|
| 飲食店営業許可 | 保健所 | 必ず必要。食品衛生責任者を置く |
| 深夜酒類提供飲食店営業の届出 | 公安委員会(所轄の警察署) | 午前0時以降も酒を出すなら必要 |
| 風俗営業の許可 | 公安委員会(所轄の警察署) | 3つのルートのいずれかに当たるなら必要 |
深夜に営業しないバーであれば、警察への手続きは原則として不要です。
届出の流れは深夜酒類提供飲食店営業の届出にまとめています。
手続きの実費と、開ける前に用意する資金は分けて見積もります。金額の目安はバーの開業資金にまとめました。
バーの開業で許可対象になる3つのルート
ここが本題です。
風俗営業の定義は法2条1項にあり、1号から3号までが飲食店に関わります。
1号は接待、2号は照度、3号は客席の作りです。
ルート1|接待をする(2条1項1号)
1号は「設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」です。
バーで問題になるのは、カウンター越しの会話がどこまで許されるかです。
特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為は接待に当たる。
警察庁 解釈運用基準(令和8年7月1日)第2の4(1)
これに対して、お酌をしたり水割りを作るが速やかにその場を立ち去る行為、客の後方で待機し、又はカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為及びこれらに付随して社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為は、接待に当たらない。
カウンター内で注文に応じて出すこと、社交儀礼上の挨拶、若干の世間話までは接待になりません。
オーセンティックなバーの通常の営業は、この範囲に収まります。
一方、客席に移って話し相手を続ける、客と一緒に歌う、一緒にダーツやゲームをやるのは接待です。
6つの類型の全体は風営法の接待とはにまとめました。
ルート2|照度を10ルクス以下にする(2号)
バーでいちばん踏みやすいのがここです。
二 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計つた営業所内の照度を十ルクス以下として営むもの(前号に該当する営業として営むものを除く。)
風営法 第2条1項2号
条文に「バー」と名指しで書かれています。
接客が一切なくても、暗くするだけで風俗営業になります。
しかも深夜営業をするなら、施行規則99条5号により照度を20ルクス以下にしてはいけません。
10ルクス超20ルクス未満は、どちらの要件も満たさない使えない帯になります。
照度の測り方と6つの構造基準は深夜酒類提供飲食店の構造基準で扱いました。
ルート3|見通し困難で5平方メートル以下の客席(3号)
三 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むもの
風営法 第2条1項3号
個室風の小さなブースや、仕切りで囲ったボックス席が当たります。
「見通すことが困難」と「5平方メートル以下」の両方を満たしたときなので、どちらかを外せば該当しません。
加えて深夜営業をするなら、施行規則99条2号が客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないことを求めています。
隠れ家的な作りにしたい場合は、設計の段階で両方を確認してください。
どのルートで開けるかが決まると、要る資格も決まります。食品衛生責任者と防火管理者の要否はバー開業に必要な資格にまとめました。
バーが許可を取ると深夜0時で閉めることになる
3つのルートのどれかに当たると、許可が必要になります。
そして許可を取ると、営業時間が縛られます。
バーは深夜が主戦場なので、ここが事業計画に直結します。
法13条1項が午前0時から午前6時を禁じている
風俗営業者は、深夜(午前0時から午前6時まで)は営業できません。
条例で定めた地域に限り午前0時以降も営業できますが、地域と時刻は都道府県ごとに違います。
つまり「暗くて雰囲気のあるバーを朝まで」は、原則として成り立ちません。
深夜まで開けるなら、照度を20ルクス以上に保ち、接待をせず、届出で営業する形になります。
無許可営業は5年以下または1,000万円以下
当たっていることに気づかないまま営業した場合も、無許可営業です。
法49条1号により、5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金で、併科もあります。
法人には3億円以下の罰金が科されます(法57条1項1号)。
2025年の改正で引き上げられた金額で、改正前は2年以下・200万円以下でした。
許可を取るか届出で済ませるかは、経験の有無にかかわらず最初に決める分岐です。未経験から始めるときの順番はバー開業と未経験で整理しました。
バーの開業後に続く義務
開けたあとにも義務が残ります。
深夜に営業するなら、許可の有無にかかわらずかかるものがあります。
人を雇うなら、そこに労務の義務が乗ります。
深夜営業なら従業者名簿が要る
法36条は、深夜において飲食店営業を営む者も対象にしています。
許可も届出もないバーでも、深夜に営業していれば従業者名簿が必要です。
しかも記載を要するのは深夜に働く人だけでなく、全ての従業者です。
書く項目と保存期間は風営法の従業者名簿にまとめました。
給与計算は深夜割増が乗る
バーテンダーやスタッフを雇うなら、深夜割増が毎月の計算に入ります。
労基法37条4項により、22時から翌5時までの労働には25%以上の割増が必要です。
営業時間の大半が深夜帯に入るので、時給に時間数を掛けるだけでは足りません。
手順は給与計算のやり方にまとめています。
法人にするなら、役員報酬は期首から3か月で固定されます。自分の取り分の決め方はバー経営の年収にまとめました。
まとめ|バーの開業で外さない点
この記事の要点をまとめます。
- 手続きは保健所+(深夜なら)警察への届出。深夜に営業しないなら警察の手続きは原則不要
- 許可対象になるルートは3つ。接待(1号)、照度10ルクス以下(2号)、見通し困難で5平方メートル以下の客席(3号)
- 2号と3号は接客と無関係。暗くする、囲うだけで該当する
- 条文に「バー」と名指しがある。2号も3号もバーを例示している
- 10ルクス超20ルクス未満は使えない帯。深夜営業には20ルクス以上が要る
- 許可を取ると原則0時まで(法13条1項)。深夜が主戦場なら届出の形を選ぶ
- 深夜営業なら従業者名簿が要る。許可も届出もない店でも対象(法36条)
内装の打ち合わせに入る前に、照度と客席の作りの2点だけ先に決めておくと手戻りが減ります。
キャストを置く形にするならガールズバーの開業、接待をする前提ならスナック開業の手順を見てください。
必要な手続きの切り分けは風営法の許可4種類にまとめています。
物件の用途地域で結論が変わる部分は風営法と用途地域にまとめています。
食品衛生責任者や防火管理者の要否はスナック経営に資格は要るかで条文ごとに整理しています。
喫煙可にする場合の要件と届出は既存特定飲食提供施設の3要件にまとめました。
テイクアウトで酒を売る場合は酒類販売業免許を確認してください。
スナックとの分かれ目はスナックとバーの違いで条文と実数から整理しました。
開業後に許可が要る状態へ変わる場面はバーと風営法にまとめました。
ボトルの値段をどう決めるかはボトルキープの値段の決め方で整理しました。
預かる以上は商法596条の責任がかかります(ボトルキープの期限と紛失)。
開けたあとの費用構成はバーの原価率は20%にまとめています。
開けたあとに何で赤字になるのかはバー経営が難しい理由で統計から確かめています。
この記事は条文と警察庁の通達をもとにした一般的な整理です。
照度の測定や個別の設計が基準を満たすかは判断が分かれることがあるため、契約や着工の前に所轄の警察署(生活安全課)や風営法に詳しい行政書士に確認してください。
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この記事で参照した一次情報
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(2条1項1号〜3号・3条1項・13条1項・33条1項・36条・49条1号・57条1項1号)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則(99条2号・5号)
- 労働基準法(37条4項)
- 警察庁 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について(令和8年7月1日付)

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