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ボトルキープの期限と紛失|店の責任は貼り紙では消えない

ボトルキープの期限と紛失時の店の責任を示すアイキャッチ

「紛失・破損の責任は負いかねます」と貼ってあるから大丈夫だと思っている。

期限切れのボトルを片付けるときにも、同じ感覚で手を付けてしまいがちです。

その貼り紙は、条文で効かないとされています。

スナックもバーも商法596条の「場屋営業者」に当たり、同条3項が免責の表示を正面から否定しているためです。

期限が切れたボトルも、勝手に処分したり店で飲んだりはできません。

所有権は客にあるので、出す相手を間違えると横領の問題になります。

この記事では、預かっている間の責任と、期限切れの扱いを条文で整理します。

読み終えたら、キープの受け方と処分のしかたを、揉めない形に決め直せます。

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目次

ボトルキープは売買と寄託の2階建て

まず法律上どういう関係になっているかを分けます。

代金を受け取って酒を渡した時点で、そのボトルは客のものです。

そのうえで店が預かるので、売買と寄託が重なっています。

寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

民法657条

預かり賃を取っていなくても善管注意義務

民法659条は、無報酬の受寄者の注意義務を「自己の財産に対するのと同一の注意」と軽くしています。

ところが店には商法が先に効きます。

商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合には、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をもって、寄託物を保管しなければならない。

商法595条

保管料を取っていないから軽くなる、ということにはなりません。

ボトルキープの免責の貼り紙は効かない

ここがこの記事の本題です。

商法は、客が集まる店の営業者に特別に重い責任を置いています。

条文が「飲食店」を名指ししています。

旅館、飲食店、浴場その他の客の来集を目的とする場屋における取引をすることを業とする者……は、客から寄託を受けた物品の滅失又は損傷については、不可抗力によるものであったことを証明しなければ、損害賠償の責任を免れることができない。

3 客が場屋の中に携帯した物品につき責任を負わない旨を表示したときであっても、場屋営業者は、前二項の責任を免れることができない。

商法596条1項・3項(抜粋)

証明の負担が店の側にある

1項の作りが重要です。

客が店の落ち度を示すのではなく、店が不可抗力だったと証明しなければ責任を免れられません。

「誰が割ったか分からない」で終わると、店が負う側に立ちます。

棚の位置や保管場所を決めておくことが、そのまま証明の材料になります。

3項が免責表示を無効にしている

3項は、責任を負わない旨を表示しても前2項の責任を免れないとしています。

「破損・紛失の責任は負いかねます」という貼り紙を出していても、それだけでは効きません。

個別に合意した特約まで一律に無効になるかは事案によりますが、一方的な掲示で済む話ではないということです。

貼り紙を出すかどうかより、預かった本数と場所を記録しておくほうが実際に効きます。

ボトルキープの期限が切れたらどうするか

「3か月で処分します」と決めている店は多くあります。

ただし条文の側から見ると、期限は返還の時期の話であって処分の根拠ではありません。

2つの条文を並べると分かります。

条文中身
民法662条1項返還の時期を定めていても、客はいつでも返還を請求できる
民法663条1項返還の時期を定めなかったときは、店はいつでも返還できる

「返す」とは書いてあるが「捨てる」とは書いていない

店にできると書かれているのは返還です。

期限が来たからといって、所有権が店に移る条文はありません。

処分できる形にしたいなら、キープの時点で合意しておくことになります。

「期限を過ぎたものは店で処分する」と書いた紙を渡し、控えを残しておくのが実務です。

期限まで連絡しておくほうが早い

合意があっても、連絡なく捨てると揉めます。

期限が近い客に一度声をかけるほうが、来店のきっかけにもなります。

そのためには、誰のボトルがいつ期限を迎えるかが一覧になっている必要があります。

値段の設計で飲み残しをあてにしないほうがよい理由も、ここにあります。

価格の組み立て方はボトルキープの値段の決め方にまとめました。

ボトルキープを他の客に出すと横領になる

残量を合わせるために、別の客のボトルから注いでしまう。

忙しい日に起きやすい事故ですが、これは法律上まったく別の話になります。

ボトルの所有権が客にあるためです。

条文中身法定刑
刑法252条1項自己の占有する他人の物を横領した5年以下の拘禁刑
刑法253条業務上自己の占有する他人の物を横領した10年以下の拘禁刑

店として預かっているので業務上になる

252条と253条を分けるのは「業務上」かどうかです。

営業として反復継続して預かっている以上、店の占有は業務上の占有です。

罰金刑が選択肢に無く、上限は10年です。

スタッフが個人で判断してやってしまうことなので、ルールとして先に禁じておく必要があります。

売掛と同じで記録が身を守る

誰のボトルをいつ開けて、どれだけ減ったか。

この記録があれば、疑われたときに説明できます。

逆に記録が無いと、客から「減りが早い」と言われたときに反論する材料がありません。

ツケの管理と同じ構造なので、スナックの請求書の書き方もあわせて見てください。

閉店するときは返すか清算する

店をたたむときに預かりボトルが残ることがあります。

客のものである以上、返すか、合意のうえで金銭で清算するかのどちらかです。

未開栓のまま渡して持ち帰らせる形は、酒類販売業免許の問題になります。

免許の範囲は酒類販売業免許で扱っています。

まとめ:ボトルキープの期限と責任

  • 関係:売買と寄託の2階建て。渡した時点で所有権は客にある
  • 注意義務:商法595条で、預かり賃を取っていなくても善管注意義務
  • 場屋営業者:商法596条1項。店が不可抗力を証明しないと責任を免れない
  • 貼り紙:同条3項で、責任を負わない旨の表示では免れられない
  • 期限:民法662条・663条は返還の話。期限で所有権が店に移る条文は無い
  • 処分:処分したいならキープの時点で合意して控えを残す
  • 他の客に出す:刑法253条の業務上横領で10年以下の拘禁刑。罰金刑は無い
  • 閉店時:返すか清算する。持ち帰らせるなら酒類販売業免許

この4つの条文はどれも、記録があるかどうかで結論が動きます。

誰の、何を、いつから、どれだけ。

締めのときに一緒に見られる形にしておくのが早道です。

飲み残しを利益に数えない理由はバーの原価率は20%でも触れています。

この記事は条文をもとにした一般的な整理です。

個別の合意がある場合の効力は事案によって変わるため、具体的な判断は弁護士に確認してください。

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