SNSも始めた、グルメサイトにも載せた、それでもカウンターが埋まらない。
集客の記事を読むたびに施策が増えて、何から手を付ければいいのか分からなくなる。
バーの集客に手を付ける前に、自分の店が「客が足りない店」なのかを数字で確かめます。
東京商工リサーチの飲食業倒産で、原因が「販売不振」の件数は前年同期比プラス0.2%とほぼ横ばいでした。
同じ期間に6.6倍になっているのは「人件費高騰」のほうです。
この記事では、集客が本当に不足しているかの見分け方と、バーの集客にかかる風営法の規制が許可の有無でどう変わるかを整理します。
読み終えたら、打つべき手が集客なのか人の配置なのかを、自店の数字で決められます。
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バーの集客が足りなくて潰れているわけではない
まず、実際に店が潰れている原因から見ます。
東京商工リサーチは飲食業の倒産を原因別に集計して公表しています。
ここを読むと、増えている原因と増えていない原因がはっきり分かれます。
増えている倒産原因は人件費のほう
| 期間 | 販売不振 | 人件費高騰 | 人手不足 |
|---|---|---|---|
| 2026年1〜5月 | 342件(+0.2%) | 20件(6.6倍) | 28件(2.0倍) |
| 2026年7月 | 91件(+7.0%) | 12件(前年同月1件) | 13件(2.2倍) |
件数そのものは販売不振が圧倒的に多いのですが、伸びているのは人件費と人手のほうです。
「客が減って潰れる店」の数は、この2年でほとんど増えていません。
落ちているのは資本金1千万円未満の店
2026年上半期の飲食業倒産は509件で、30年で初めて500件台に乗りました。
1〜8月の累計は701件、前年同期比プラス8.8%です。
資本金1千万円未満が90.5%を占めていて、落ちているのは小規模店のほうです。
集客の前に人件費を確かめる
売上が横ばいでも、人件費が上がれば同じだけ利益は減ります。
集客の施策に費用をかける前に、いまの人件費が売上に対してどこにいるかを先に見てください。
バーの収支の構造はバー経営が難しいと感じたときに見る数字に分解しました。
バーの集客は開業時の予想とどれだけずれるか
もう1つ、自分の店の位置を測れる数字があります。
日本政策金融公庫が、開業した人の月商と予想の達成率を公表しています。
「思ったより入らない」がどのくらい普通のことなのかが分かります。
予想月商を達成しているのは約6割
予想月商達成率は「125%以上」が34.2%、「100〜125%未満」が24.5%で、合わせて約6割です。
残りの4割は、自分で立てた月商に届いていません。
予想に届かないこと自体は、店の出来の問題とは限らないということです。
売上が増加傾向の店は60.1%
現在の売り上げ状況は「増加傾向」が60.1%、「横ばい」が34.0%、「減少傾向」が5.9%でした。
採算状況は黒字基調が67.0%、赤字基調が33.0%です。
減少傾向の店は6%しかないので、下がっているなら集客の問題として扱う根拠があります。
月商100万円未満が39.5%
調査時点の月商は「100万円未満」が39.5%、「100万〜500万円未満」が44.2%です。
開業時の平均従業者数は2.8人で、3年連続で3人を下回っています。
この規模帯で費用のかかる集客策を続けると、増えた売上より費用のほうが先に効きます。
バーの集客にかかる風営法の規制は許可の有無で変わる
ここからはやってよい集客とそうでない集客の線引きです。
風営法には広告・宣伝の規制がありますが、かかる相手が条文で限定されています。
接待をするかどうかで、同じ広告でも扱いが変わります。
16条は風俗営業者にかかる
風営法16条は「風俗営業者は、その営業につき、営業所周辺における清浄な風俗環境を害するおそれのある方法で広告又は宣伝をしてはならない」と定めています。
主語が風俗営業者なので、3条1項の許可を取った店にかかる規定です。
何が対象になるかは風営法の広告規制で条文と処分例から整理しました。
届出の店に準用されるのは照度と騒音だけ
深夜に営業する飲食店への準用は32条と33条に書かれています。
32条2項が準用しているのは14条(照度)と15条(騒音・振動)で、16条は入っていません。
接待をせず届出だけで営業するバーには、16条の広告規制はかかりません。
かからなくても指示と営業停止は及ぶ
16条がかからないことは、何をしてもよいという意味ではありません。
34条の指示と営業停止は「飲食店営業を営む者」が対象なので、届出だけの店にも及びます。
許可を取った店の側は、25条の指示と26条の営業停止・許可取消しが効きます。
罰金ではなく営業を止められるほうが重い処分です。
バーの集客で2025年改正の線を越えない
2025年の改正で、集客と営業の手法そのものを名指しした条文が新しく入りました。
18条の3です。
ここも対象が限定されているので、まず自分の店が入るかを確かめます。
18条の3は接待をする店にだけかかる
18条の3の主語は「第二条第一項第一号の営業を営む風俗営業者」です。
2条1項1号は接待をする営業なので、照度や客席の広さで許可を取っている2号・3号の店は対象外です。
接待の線引きそのものは風営法の接待の判断基準にまとめました。
料金の説明と注文前の提供が名指しされた
- 1号:17条の料金について、事実に相違する説明をし、または客を誤認させるような説明をすること
- 2号:恋愛感情その他の好意の感情を相互に抱いていると客が誤信しているのに乗じ、困惑させて遊興または飲食をさせること
- 3号:客が注文等をする前に遊興または飲食の全部または一部を提供し、困惑させてそれをさせること
1号は広告の料金表示にも直接かかる内容です。
安く見える表示で集めて店内で加算する、という組み立ては条文の側から禁じられました。
バーの集客が増えたあとに残るのは人件費
最後に、集客がうまくいったあとの話です。
客が増えると、その時間に立つ人が要ります。
バーの場合、その時間は割増のかかる時間帯であることが多くなります。
客が増えると深夜に人が要る
22時から翌5時に働かせると、賃金は1.25倍になります。
集客で伸びた売上のうち、この割増の分は最初から引かれる前提で見てください。
倒産原因で伸びているのが人件費だったことと、ここはつながっています。
1人当たり売上を上げると分配率が下がる
公庫の経営指標では、黒字のバーは人件費率がむしろ高く、差がついているのは労働分配率のほうでした。
人を減らすのではなく、同じ人が立つ時間の売上を上げると分配率が下がります。
集客の目標を「客数」ではなく「その時間の売上」で置くと、この計算に乗せられます。
オーナーの取り分との関係はバー経営の年収で整理しました。
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まとめ|バーの集客で外さない点
- まず原因を切り分ける:倒産原因の販売不振は+0.2%、人件費高騰は6.6倍。増えているのは人件費のほう
- 予想に届かないのは4割:予想月商を達成しているのは約6割。届かないこと自体は普通
- 減少傾向は6%しかない:売上が実際に下がっているなら集客の問題として扱える
- 16条は許可を取った店にかかる:届出だけの店に32条2項で準用されるのは14条と15条だけ
- かからなくても34条は及ぶ:飲食店営業を営む者への指示と営業停止
- 18条の3は接待をする店:料金の虚偽説明と注文前の提供が名指しされた
集客の施策を増やす前に、自分の店が4割のほうにいるのか、減少傾向の6%にいるのかを先に決めてください。
そのどちらでもなく利益だけが残らないなら、打つ手は集客ではなく人の配置のほうです。
なお倒産統計は飲食業全体の集計で、バーだけの内訳は毎回は公表されません。
自店の判断は顧問税理士と実際の試算表で行ってください。
この記事で参照した一次情報
- 東京商工リサーチ「2026年上半期『飲食業』倒産」
- 同「2026年1-5月の『飲食業』倒産」
- 同「2026年7月『飲食業』倒産」
- 同「8月の『飲食業』倒産80件」
- 日本政策金融公庫「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月5日公表)
- 同「小企業の経営指標調査」
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(14条〜18条の3・25条・26条・32条・34条)
- 労働基準法(37条4項)

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