スナックを始めるのに、何か試験を受けないといけないのだろうか。
調理師や飲食店の資格の話が混ざって出てくるので、ここで止まりがちです。
スナック経営に国家試験が必要な資格はひとつもありません。
食品衛生責任者は講習会の受講で足り、防火管理者も講習です。
そのかわり、資格ではなく許可・届出と「人を選んで届け出ること」が要件になっています。
この記事では、必ず要るもの、規模によって要るもの、接待をするかどうかで変わるものを条文で分けて整理します。
読み終えたら、開店までに受けておく講習と、届け出る人を決められます。
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スナック経営に必要な資格の全体像
まず整理します。
「資格」と呼ばれているものは、実際には次の3つの選任義務です。
どれも試験ではなく、講習または要件を満たす人を置くという形をとっています。
| 選任するもの | 根拠 | 必要になる場面 |
|---|---|---|
| 食品衛生責任者 | 食品衛生法51条1項/施行規則別表第17 | すべての店 |
| 防火管理者 | 消防法8条1項/施行令1条の2第3項 | 収容人員30人以上 |
| 風俗営業の管理者 | 風営法24条1項 | 接待をする店(1号営業など) |
これとは別に、保健所の飲食店営業許可と、警察の許可または届出が必要です。
手続きの切り分けは風営法の許可4種類にまとめています。
資格のほかに用意するのがお金です。開業資金の目安と席数からの逆算はスナックの開業資金にまとめました。
スナック経営で必ず要る食品衛生責任者
3つのうち、規模に関係なく必要なのがこれだけです。
根拠は食品衛生法51条1項を受けた厚生労働省令、具体的には食品衛生法施行規則の別表第17です。
営業許可の申請書にも、氏名と資格の種類・受講した講習会を書く欄があります。
別表第17が定める3つの該当者
別表第17の1号ロは、食品衛生責任者になれる人を3つ挙げています。
- 食品衛生監視員または食品衛生管理者の資格要件を満たす者
- 調理師、製菓衛生師、栄養士、管理栄養士、船舶料理士、と畜場法の衛生管理責任者・作業衛生責任者、食鳥処理衛生管理者
- 都道府県知事等が行う講習会、または適正と認める講習会を受講した者
実務のほとんどは3番目です。
1日程度の講習会を受ければ足りるので、試験対策は要りません。
すでに調理師や栄養士の免許を持っているなら、2番目に当たるので受講は不要です。
食品衛生管理者とは別のもの
名前が似ているので混同されますが、食品衛生管理者は食品衛生法48条の別の制度です。
乳製品や食肉製品などの製造・加工業に置くもので、飲食店には関係しません。
別表第17は、食品衛生管理者が食品衛生責任者を兼ねられるとも書いています。
接待をしないバーとして開けるなら、要る資格の組み合わせが変わります。バー側の整理はバー開業に必要な資格に分けて書きました。
スナック経営で防火管理者が要るのは30人から
防火管理者は、店の規模で要否が分かれます。
小さな店なら不要な場合があるので、まず人数を確かめてください。
判定に使うのは面積ではなく収容人員です。
施行令1条の2第3項1号ロの30人
消防法8条1項は、政令で定める防火対象物について防火管理者を定めるよう求めています。
その政令が消防法施行令1条の2第3項で、1号ロが別表第一の(一)項から(四)項までなどについて収容人員30人以上としています。
別表第一を見ると、(二)項イがキャバレー、カフェー、ナイトクラブ、(三)項ロが飲食店です。
接待をする店もしない店も、どちらも1号ロに含まれるので基準は同じ30人です。
収容人員には客だけでなく従業者も入ります(同条4項により算定方法は総務省令)。
選任したら消防署に届け出る
消防法8条2項は、防火管理者を定めたら遅滞なく所轄の消防長または消防署長に届け出るよう求めています。
解任したときも同じく届出が必要です。
定められていないと認められれば、8条3項により選任を命じられます。
業務の中身は消防計画の作成、消火・通報・避難の訓練、設備の点検、火気の監督などです。
接待をするスナック経営には管理者の選任が要る
3つめは風営法の管理者です。
これは接待をする店、つまり3条1項の許可を受ける店にかかります。
資格試験はありませんが、なれない人が条文で決まっています。
申請の時点で決まっている必要がある
5条1項5号が、許可申請書の記載事項として管理者の氏名と住所を挙げています。
さらに4条2項3号は、管理者を選任すると認められない相当な理由があるときは許可をしてはならないとしています。
許可が下りてから探す、という順番にはできません。
選任しなければ55条5号により50万円以下の罰金です。
労働基準法違反でも5年間はなれない
管理者の欠格事由は24条2項が4条1項の号を引く形で決まっています。
見落とされやすいのが4条1項2号トで、労働基準法違反の罰金でも5年間は欠格になります。
年少者の深夜業や中間搾取の罰条が対象に入っています。
詳しくは風俗営業の管理者で扱っています。
スナック経営の許可は資格より承継の仕組みが違う
最後にひとつ、店を引き継ぐときに効く違いを挙げます。
保健所の許可と警察の許可で、承継の扱いが正反対です。
居抜きで店を買うときに関係します。
飲食店営業許可は譲渡でも引き継げる
前条第一項の許可を受けた者(以下この条において「許可営業者」という。)が当該営業を譲渡し、又は許可営業者について相続、合併若しくは分割……があつたときは、当該営業を譲り受けた者又は相続人……は、許可営業者の地位を承継する。
食品衛生法56条1項
譲渡でも承継でき、手続は2項の届出です。
相続人が2人以上いる場合は、全員の同意で承継する相続人を選定します。
風営法の許可は譲渡では引き継げない
一方、風営法の許可で承継が認められているのは相続・合併・分割の3つだけです。
しかも届出ではなく承認で、相続は死亡後60日以内という期限があります。
売買や贈与では引き継げません(風営法の許可の相続)。
居抜きで引き継げるのは保健所の許可のほうだけ、と考えておくと間違えにくくなります。
まとめ|スナック経営の資格で外さない点
最後に要点を並べます。
- 国家試験が必要な資格はない。要るのは許可・届出と3つの選任
- 食品衛生責任者はすべての店に必要。講習会の受講で足りる(施行規則別表第17の1号ロ(3))
- 調理師・製菓衛生師・栄養士・管理栄養士なら受講不要
- 食品衛生管理者は別制度。飲食店には関係しない
- 防火管理者は収容人員30人以上から(施行令1条の2第3項1号ロ)。従業者も人数に入る
- 選任・解任とも消防署へ届出(消防法8条2項)
- 接待をするなら風俗営業の管理者。申請の時点で決まっている必要がある
- 飲食店営業許可は譲渡でも承継できるが、風営法の許可はできない
資格の心配より、講習の日程と物件の条件を先に押さえるほうが実際には効きます。
開業の手順全体はスナック開業の手順にまとめています。
喫煙可にするなら保健所への届出が別に要ります(既存特定飲食提供施設の3要件)。
酒の持ち帰り販売を始めるなら酒類販売業免許も必要になります。
業態の名前で要る資格が変わるわけではありません(スナックとバーの違い)。
この記事は条文をもとにした一般的な整理です。
講習会の実施方法や収容人員の算定は自治体で運用が異なるため、保健所・消防署・所轄の警察署にそれぞれ確認してください。
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この記事で参照した一次情報
- 食品衛生法(48条・51条・55条・56条)/食品衛生法施行規則(別表第17)
- 消防法(8条)/消防法施行令(1条の2・別表第一)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(4条・5条・7条・24条・55条)

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