店をやっていた親が亡くなり、許可をどう扱えばいいのか分からないまま日が過ぎている。
ここは期限が短いので、迷っている間に選択肢が減ります。
風営法の許可は売買や贈与では引き継げませんが、相続だけは承認を受けて承継できます。
期限は被相続人の死亡後60日以内です。
そして申請さえしておけば、承認または不承認の通知を受ける日まで、店を閉めずに営業を続けられます。
この記事では、承継できる範囲、60日の数え方、申請書と添付書類、承認されなかったときの扱いまでを条文で整理します。
読み終えたら、60日のどこまで進んでいるかを確かめて、次に出す書類が決まります。
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風営法の許可は相続だけ承継の仕組みがある
まず前提を確認します。
風俗営業の許可は3条1項により、営業所ごとに、その人に対して与えられるものです。
だから店ごと売っても、個人から法人に変えても、原則は取り直しになります。
承継できるのは3つだけ
条文に用意されている承継の仕組みは次の3つです。
| 事由 | 条文 | 申請の時期 | 手数料の標準額 |
|---|---|---|---|
| 相続 | 7条1項 | 死亡後60日以内 | 9,000円 |
| 法人の合併 | 7条の2第1項 | あらかじめ | 12,000円 |
| 法人の分割 | 7条の3第1項 | あらかじめ | 12,000円 |
相続だけが事後の申請で、合併と分割は事前です。
人の死亡は事前に手続きできないので、そこだけ扱いが分かれています。
許可全体の仕組みは風営法の許可4種類にまとめています。
他人の許可のまま営業すると名義貸しになる
承認を受けないまま、亡くなった人の許可で営業を続けることはできません。
11条の名義貸しに当たると、49条3号により5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金です。
無許可営業とまったく同じ条文で処罰されます(風営法の名義貸し)。
風営法の相続は死亡後60日以内に申請する
期限と、その間の営業の扱いが7条の要点です。
ここを知らないと、必要のない休業をすることになります。
条文をそのまま確認します。
7条1項の期限は60日
風俗営業者が死亡した場合において、相続人(相続人が二人以上ある場合においてその協議により当該風俗営業を承継すべき相続人を定めたときは、その者。以下同じ。)が被相続人の営んでいた風俗営業を引き続き営もうとするときは、その相続人は、国家公安委員会規則で定めるところにより、被相続人の死亡後六十日以内に公安委員会に申請して、その承認を受けなければならない。
風営法7条1項
起算点は「被相続人の死亡後」です。
相続の放棄や遺産分割の期限とは別なので、混同しないでください。
相続人が複数いる場合は、括弧書きのとおり協議で承継する1人を決めてから申請します。
申請すれば結論が出るまで営業できる
実務でいちばん効くのが7条2項です。
相続人が前項の承認の申請をした場合においては、被相続人の死亡の日からその承認を受ける日又は承認をしない旨の通知を受ける日までは、被相続人に対してした風俗営業の許可は、その相続人に対してしたものとみなす。
風営法7条2項
みなしの起算点は申請日ではなく死亡の日です。
審査に時間がかかっても、その間は相続人が許可を受けている扱いになります。
ただしこの効果は「申請をした場合」に限られるので、申請しないまま営業すれば名義貸しの問題に戻ります。
承認されると風俗営業者の地位を承継する
7条4項は、承認を受けた相続人が風俗営業者の地位を承継すると定めています。
新しく許可を取り直すのではなく、元の許可をそのまま引き継ぐ形です。
営業所の場所も種別もそのままなので、構造や設備を変えるなら別に9条1項の承認が必要になります(風営法の変更承認)。
風営法の相続で承認されない場合がある
相続だからといって自動的に通るわけではありません。
承継する人自身が審査を受けます。
ここで引っかかると、店を続けられなくなります。
4条1項がそのまま準用される
7条3項により、許可の人的な欠格事由である4条1項が承認にも準用されます。
破産して復権を得ていない、1年以上の拘禁刑を受けた、といった事由に当たれば承認されません。
見落とされやすいのが2号トで、労働基準法違反の罰金でも5年間は欠格になります。
強制労働、中間搾取、最低年齢、年少者の深夜業と危険有害業務が対象です。
なお準用されるのは4条1項だけで、営業所についての4条2項ではありません。
承認しないときは理由を付した書面で通知される
施行規則16条が通知の仕方を定めています。
承認したときは速やかに通知、承認しないときは理由を付した書面で通知です。
理由が書面で残るので、何が引っかかったのかは確認できます。
風営法の相続の申請書と添付書類
様式と添付書類は施行規則13条にあります。
申請書は別記様式第六号の相続承認申請書です。
添付書類が5号まであり、うち2つは相続に固有のものです。
施行規則13条2項の5つ
- 申請者が既に風俗営業許可等を受けている場合の書類(府令1条5号)
- 申請者が未成年者の風俗営業者で、法定代理人が同じ場合の書類(府令1条6号)
- 上の2つに当たらない場合の、申請者に係る書類(府令1条4号)
- 申請者と被相続人との続柄を証明する書面
- 申請者以外に相続人があるときは、その者の氏名・住所を記載した書面と、当該申請に対する同意書
5号に注意してください。
他に相続人がいるなら、その全員の同意書が要ります。
60日という期限のなかで、親族の同意を取りまとめる必要があるということです。
1号から3号でいう「府令」は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令(昭和60年総理府令第1号)です。
手数料の標準額は9,000円
地方公共団体の手数料の標準に関する政令が、相続に係る承認の申請に対する審査を9,000円としています。
同じ都道府県で同時に他の相続承認の申請をする場合、その他方の審査は3,800円です。
実際の額は都道府県の条例で決まるので、所在地で確認してください。
風営法の相続の承認を受けた後にやること
承認で終わりではありません。
許可証の扱いが7条5項と6項に分かれて書かれています。
そして片方にだけ罰則があります。
承認されたら許可証の書換えを受ける
7条5項は、承認を受けたら遅滞なく被相続人の許可証を提出して書換えを受けるよう求めています。
これを怠ると、56条2号により30万円以下の罰金です。
書換えの手数料の標準額は1,500円です。
許可証は6条により営業所の見やすい場所に掲示する義務があるので、名義が古いままでは掲示義務も満たせません。
承認されなければ許可証を返納する
7条6項は、承認しない旨の通知を受けたら遅滞なく許可証を返納するよう定めています。
条文を確認したところ、この7条6項には罰則が置かれていません。
56条2号が引いているのは7条5項だけで、6項は49条から56条のどこにも出てきません。
一方、廃業や取消しのときの返納義務である10条1項は56条4号で30万円以下の罰金の対象です。
もっとも、承認されなければ営業を続けられないことに変わりはありません。
まとめ|風営法の相続で外さない点
最後に要点を並べます。
- 承継できるのは相続・合併・分割の3つだけ。売買や贈与では引き継げない
- 相続だけが事後申請。死亡後60日以内(7条1項)。合併と分割は「あらかじめ」
- 相続人が複数なら協議で1人を決めてから申請する
- 申請すれば通知の日まで営業できる(7条2項)。みなしの起算点は死亡の日
- 4条1項が準用される。労基法違反の罰金でも5年間は欠格(2号ト)
- 他に相続人がいれば同意書が必要(施行規則13条2項5号)。60日のなかで取りまとめる
- 手数料の標準額は9,000円、書換えは1,500円
- 書換えを怠ると30万円以下(56条2号)。不承認時の返納(7条6項)には罰則がない
60日は、葬儀と並行して動くには短い期間です。
店を継ぐ可能性があるなら、誰が継ぐかだけでも先に話しておくと動きやすくなります。
店で起きやすいトラブルを法令別に分けたものはスナック経営のトラブルにまとめています。
この記事は条文をもとにした一般的な整理です。
誰が承継できるか、添付書類の具体的な内容は個別の事情で変わるため、所轄の警察署(生活安全課)や風営法に詳しい行政書士に確認してください。
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この記事で参照した一次情報
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(3条・4条1項・6条・7条・7条の2・7条の3・9条・10条・11条・49条・56条)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則(13条・16条)
- 地方公共団体の手数料の標準に関する政令(別表・風俗営業関係の各項)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令(1条)

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