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風営法の従業者名簿|記載事項と、労働者名簿で代用できる条件

風営法の従業者名簿の記載事項と、労働者名簿で代用できる条件を解説する記事のアイキャッチ

労働者名簿を作ってあるから、従業者名簿は要らないと聞いた。

間違いではないのですが、そのまま使えるのは一部の店だけです。

労働者名簿をそのまま従業者名簿として使える場合はありますが、多くの店では3つの項目が足りません。

警察庁は「労働者名簿の記載により従業者名簿に代替できる場合には、別に従業者名簿を作成することを要しない」としています。

ただし労働者名簿には、30人未満の店なら省略してよい項目があり、日雇いの人は除かれ、業務委託のキャストは初めから対象外です。

風営法の従業者名簿には、その3つすべてを書かなければなりません。

この記事では、書くべき項目、労働者名簿との差分、接客従業者の本人確認、保存期間と罰則を、条文と警察庁の通達で順に整理します。

読み終えたら、いまの名簿に足りない欄がどれかを確かめて、立入検査に出せる形に直せます。

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目次

風営法の従業者名簿は深夜営業の飲食店にも義務がある

まず、自分の店が対象かどうかを確かめます。

根拠は風営法36条です。

「風俗営業の許可を取っている店だけの話」と思われがちですが、条文はもっと広く網をかけています。

許可も届出もしていない店が対象に入ることがある

風俗営業者、……特定遊興飲食店営業者、第三十三条第六項に規定する酒類提供飲食店営業を営む者及び深夜において飲食店営業(酒類提供飲食店営業を除く。)を営む者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、営業所ごとに、従業者名簿を備え、これに当該営業に係る業務に従事する者の住所及び氏名その他内閣府令で定める事項を記載しなければならない。

風営法 第36条

末尾の「深夜において飲食店営業を営む者」に注目してください。

酒類提供飲食店営業を除くとあるので、これは酒を出さずに深夜営業している飲食店を指します。

つまり、接待もせず酒も出さない深夜のラーメン屋でも、従業者名簿は要ります。

ここでいう深夜は風営法13条1項の午前0時から午前6時までです。

深夜営業なら「全ての従業者」を書く

ここは外しやすいところです。

深夜に働く人だけを書けばよさそうに見えますが、警察庁の解釈運用基準はそうなっていません。

また、「第33条第6項に規定する酒類提供飲食店営業」や「深夜」(午前0時から午前6時までの時間。法第13条第1項)において営む「飲食店営業」について、従業者名簿の記載を要する従業者とは、午後10時以降又は深夜において当該営業に係る業務に従事する従業者のみならず、全ての従業者である。

警察庁 解釈運用基準(令和8年7月1日)第35の1(2)

昼のランチだけを手伝っている人も、名簿に入れる必要があります。

雇用契約がなくても書く

もう1つ、対象者の範囲が広いことも押さえてください。

従業者名簿の記載については、雇用契約のある労働者に限るものではないが、労働基準法に基づく労働者名簿の記載により従業者名簿に代替できる場合には、別に従業者名簿を作成することを要しない。
業務の一部が委託される場合において、当該委託業務に携わる従業者も従業者名簿に記載することを要する。例えば、第三者から派遣されたコンパニオンやダンサー、歌手等も「当該営業に係る業務」として接待をし、ダンスを見せ、又は歌を聴かせるのであれば、「当該営業に係る業務に従事する者」に当たる。

警察庁 解釈運用基準(令和8年7月1日)第35の1(1)(2)

業務委託で入ってもらっているキャストも、派遣で来た歌手も、名簿に書きます。

この名簿を管理することは、施行規則38条8号で管理者の業務としても定められています。

管理者に誰を選べるかは風俗営業の管理者で扱っています。

そもそもキャストを業務委託にできるのかという論点はキャバクラの業務委託は可能かで別に扱っていますが、契約の形がどちらでも名簿には載せる、という点は変わりません。

風営法の従業者名簿に書く7つの事項

次に、何を書くかです。

法律に書いてあるのは住所と氏名だけで、残りは内閣府令に置かれています。

ここを見落とすと、名簿はあるのに記載不備、という状態になります。

風営法の従業者名簿に書く7つの項目と根拠条文の表。住所と氏名が法36条、性別・生年月日・採用年月日・退職年月日・従事する業務の内容が府令25条
7つめの「従事する業務の内容」が労働者名簿との最大の差です。

残りの5つは府令25条にある

法第三十六条の内閣府令で定める事項は、性別、生年月日、採用年月日、退職年月日及び従事する業務の内容とする。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令 第25条

法36条の2つと合わせて、書く項目は7つになります。

項目根拠
住所法36条
氏名法36条
性別府令25条
生年月日府令25条
採用年月日府令25条
退職年月日府令25条
従事する業務の内容府令25条

「従事する業務の内容」は、接客、調理、送迎といった実際の仕事を書きます。

あとで見るとおり、この項目が労働者名簿との最大の差になります。

従業者名簿を労働者名簿で代用できる条件

ここが実務でいちばん知りたいところだと思います。

2つ作らなければならないのか、1つで足りるのか。

答えは、条件を満たせば1つで足ります。

警察庁は「別に作成することを要しない」としている

先ほど引用した解釈運用基準の一文が根拠です。

労働者名簿の記載により従業者名簿に代替できる場合には、別に従業者名簿を作成することを要しない、と書かれています。

効いているのは「代替できる場合には」という条件つきの書き方です。

無条件に1つでよい、とは言っていません。

労働者名簿に書く事項(労基則53条)

比べるために、労働者名簿の側も確認します。

労働基準法107条1項が氏名・生年月日・履歴を挙げ、残りを労働基準法施行規則53条が定めています。

法第百七条第一項の労働者名簿(様式第十九号)に記入しなければならない事項は、同条同項に規定するもののほか、次に掲げるものとする。
一 性別/二 住所/三 従事する業務の種類/四 雇入の年月日/五 退職の年月日及びその事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)/六 死亡の年月日及びその原因
常時三十人未満の労働者を使用する事業においては、前項第三号に掲げる事項を記入することを要しない。

労働基準法施行規則 第53条

最後の一文に注目してください。

30人未満の事業では、3号の「従事する業務の種類」を書かなくてよいことになっています。

そのまま流用すると3つ欠ける

2つを並べると、足りなくなる箇所がはっきりします。

労働者名簿(労基法107条)従業者名簿(風営法36条)
従事する業務30人未満は記入不要必ず記載(府令25条)
日雇いの人「日日雇い入れられる者」は除外除外の定めなし
業務委託・派遣労働者でないので対象外記載が必要
履歴必要求められていない

スナックやガールズバーはほとんどが30人未満なので、労働者名簿では「従事する業務の種類」が空欄でも適法です。

ところがその状態のまま従業者名簿として出すと、風営法側では記載不備になります。

1つにまとめるなら、労働者名簿の様式に「従事する業務の内容」を必ず埋め、業務委託のキャストと日雇いの人の行も足してください。

逆にいえば、この3点を埋めれば1つの名簿で両方を満たせます。

従業者名簿とは別に、生年月日等の確認記録も要る

名簿とは別に、もう1つの義務があります。

接客従業者の生年月日等を書類で確認し、その記録を残す義務です(法36条の2)。

対象は接待飲食等営業と、深夜酒類提供飲食店営業などに限られます。

確認するのは生年月日・国籍・在留資格

法36条の2第1項が3つを挙げています。

  • 生年月日(1号)
  • 国籍(2号)
  • 在留資格等(3号)|日本国籍を有しない者について、在留資格・在留期間の満了日・資格外活動許可の有無と内容、または特別永住者の資格

解釈運用基準は、国籍の確認について「接客従業者が日本人であるか外国人であるかにかかわらず、必ず確認しなければならない」としています。

日本人だから国籍の確認は不要、とはなりません。

日本人の確認に運転免許証では足りない

ここは多くの店が取り違えているところです。

使える書類は府令26条に限定列挙されています。

一 日本国籍を有する者 次に掲げる書類のいずれか
イ 住民票記載事項証明書(住民基本台帳法第七条第二号に掲げる事項及び本籍地都道府県名が記載されているものに限る。)
ロ 旅券法第二条第二号の一般旅券
ハ イ及びロに掲げるもののほか官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに類するもので、当該者の生年月日及び本籍地都道府県名の記載のあるもの

府令 第26条1号

どの選択肢にも「本籍地都道府県名の記載」が条件として付いています。

運転免許証やマイナンバーカードは券面に本籍が載っていないため、ハには当たりません。

解釈運用基準がハの例として挙げているのは、船員手帳、小型船舶操縦免許証、身体障害者手帳、猟銃又は空気銃の所持許可証です。

同じ箇所で、児童扶養手当証書は本籍が記載されていないことから当たらない、とも明記されています。

実務では、本籍地入りの住民票記載事項証明書を出してもらうのがいちばん確実です。

外国人は在留資格と資格外活動許可を見る

外国籍の人を接客に入れる場合は、確認の中身が変わります。

書類は旅券または在留カードで、在留資格と在留期間の満了日を必ず確認します。

解釈運用基準は、在留資格がないことや在留期間を経過して不法残留となっていることが判明した外国人は就労させることができない、と明示しています。

また、資格外活動の許可について、風俗営業や性風俗関連特殊営業に従事することは許可されない、とも書かれています。

「興行」の在留資格でショーや歌舞音曲の仕事に就ける場合でも、接待をすれば資格外活動に当たり不法就労になります。

何が接待に当たるかは風営法の接待とはで類型ごとに整理しました。

確認書類の写しは名簿に添付して残す

確認して終わりではなく、記録を作って保存します(法36条の2第2項)。

方法は施行規則108条1項に定められていて、確認した事項と確認年月日を従業者名簿に記載し、確認に用いた書類の写しを名簿に添付して保存する形が基本です。

保存期間は、その従業者が退職した日から起算して3年を経過する日までです。

従業者名簿の保存期間は退職した日から3年

保存期間も、労基法側と起算点が違います。

ここを揃えて管理しないと、片方だけ先に捨ててしまいます。

風営法側の根拠は施行規則106条です。

施行規則106条は「退職した日から起算して3年」

風俗営業者、……法第三十三条第六項に規定する酒類提供飲食店営業を営む者及び深夜において飲食店営業(酒類提供飲食店営業を除く。)を営む者は、その従業者が退職した日から起算して三年を経過する日まで、その者に係る従業者名簿を備えておかなければならない。

風営法施行規則 第106条

起算点が「退職した日」と明記されている点が特徴です。

労基法側は本則5年だが当分の間3年

労働者名簿の保存は労働基準法109条です。

条文は「五年間保存しなければならない」ですが、附則143条1項によって当分の間3年と読み替えられています。

二次情報には5年とだけ書かれているものが多いので、原典で確かめてください。

賃金台帳とあわせた保存の考え方は個人事業主が従業員を雇うときにやることにまとめています。

従業者名簿は電子データで備えてよい

紙のファイルで保管しなければならない、と思われがちですが、そうではありません。

施行規則107条が電磁的方法による記録を認めています。

ただし条件が付いています。

法第三十六条に規定する事項が、電磁的方法により記録され、必要に応じ電子計算機その他の機器を用いて直ちに表示されることができるときは、当該記録をもつて同条に規定する当該事項が記載された従業者名簿に代えることができる。

風営法施行規則 第107条

鍵は「直ちに表示されることができるとき」です。

立入りの際にその場で画面に出せる状態であることが求められるので、店のPCやタブレットから開けるようにしておく必要があります。

本人確認書類の写しについても、施行規則108条1項2号がスキャナで読み取った記録での保存を認めています。

従業者名簿を備えていないときの罰則は100万円以下の罰金

最後に罰則です。

名簿まわりは軽く見られがちですが、金額は小さくありません。

しかも「備えていない」だけでなく「必要な記載をしていない」場合も対象です。

記載漏れも虚偽記載も同じ条文で処罰される

次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、百万円以下の罰金に処する。
三 第三十六条の規定に違反して、従業者名簿を備えず、又はこれに必要な記載をせず、若しくは虚偽の記載をしたとき。

風営法 第54条

「従事する業務の内容」が空欄のままなら、必要な記載をしていない状態に当たりえます。

同じ54条の5号で、生年月日等の確認の記録を作成しない、虚偽の記録を作成する、保存しない場合も同じ罰金の対象です。

労基法側は30万円以下で、額が3倍以上違う

労働者名簿を作っていない場合の罰則と比べると、差がはっきりします。

労働者名簿従業者名簿
根拠労基法107条風営法36条
罰則30万円以下の罰金(労基法120条1号)100万円以下の罰金(風営法54条3号)
保存5年。附則143条1項で当分の間3年退職した日から起算して3年

労務の書類として見ると軽く感じますが、風営法の書類として見ると重い義務です。

立入りで最初に見られる書類でもあるので、優先して整えておく価値があります。

まとめ|風営法の従業者名簿で外さない点

この記事の要点をまとめます。

  • 対象は広い。許可も届出もない店でも、深夜に飲食店営業をしていれば義務がある
  • 書くのは全ての従業者。深夜に働く人だけではなく、昼だけの人も含む
  • 雇用契約は問わない。業務委託のキャストも、派遣のダンサーや歌手も記載する
  • 項目は7つ。住所・氏名(法36条)と、性別・生年月日・採用年月日・退職年月日・従事する業務の内容(府令25条)
  • 1つにまとめられる。ただし労働者名簿をそのまま流用すると、業務の内容・日雇い・業務委託の3点が欠ける
  • 本人確認は本籍地入りの書類で。運転免許証やマイナンバーカードは券面に本籍がなく使えない
  • 保存は退職日から3年。電子データで備えてよいが、その場で表示できることが条件
  • 罰則は100万円以下。記載漏れも対象(風営法54条3号)

先に手を付けるなら、いま使っている労働者名簿に「従事する業務の内容」の列を足し、業務委託のキャストの行を作るところからです。

深夜営業そのものの手続きは深夜酒類提供飲食店営業の届出にまとめています。

名簿の義務は営業の区分ごとに範囲が変わるため、風営法の許可4種類もあわせて確認してください。

記載事項を満たす様式は従業者名簿テンプレートで無料配布しています。

名簿の不備は行政処分で最も多い違反です(ガールズバーの摘発)。

国籍等の確認と在留資格の関係はスナック・ガールズバーで外国人を雇えるかで扱っています。

この記事は条文と警察庁の通達をもとにした一般的な整理です。

様式や運用の細部は都道府県で異なることがあるため、所轄の警察署(生活安全課)で配布している様式と記入例をあわせて確認してください。

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