「従業員名簿」で検索して出てきた様式をそのまま使っている。
その様式のほとんどは労働者名簿で、風営法の項目が入っていません。
そのまま使うと、風営法で求められている項目が3つ足りません。
しかも罰則は風営法のほうが重く、100万円以下の罰金です(風営法54条3号)。
ガールズバーの行政処分で最も多いのが、この名簿の備付義務違反でした。
この記事では、風営法36条の従業者名簿と労働基準法107条の労働者名簿を1枚で満たすテンプレート(Excel)を無料で配布し、足りない3つと本人確認の記録欄を説明します。
読み終えたら、立入検査でそのまま出せる名簿に差し替えられます。
従業者名簿のテンプレートに入れた項目
記載事項は法律と内閣府令に分かれて書かれています。
法律だけを読んでも2つしか出てこないので、府令まで見ないと様式が作れません。
合わせて7項目です。
法36条の2つは住所と氏名
風営法36条は「営業所ごとに、従業者名簿を備え、これに当該営業に係る業務に従事する者の住所及び氏名その他内閣府令で定める事項を記載しなければならない」としています。
名簿は事業者単位ではなく営業所ごとに備えます。
2店舗あるなら2冊です。
府令25条の5つが残りの項目
内閣府令25条は「性別、生年月日、採用年月日、退職年月日及び従事する業務の内容」と定めています。
- 法36条:住所/氏名
- 府令25条:性別/生年月日/採用年月日/退職年月日/従事する業務の内容
この7つが、どの店でも必ず要る項目です。
この「府令」は風営法施行規則ではない
条文を自分で確かめるときに引っかかるのがここです。
25条があるのは風営法施行規則(国家公安委員会規則)ではなく、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令」です。
e-Govでは昭和60年総理府令第1号として収録されています。
備付けの方法や保存期間のほうは風営法施行規則の106条以下にあるので、2つの規則を行き来することになります。
労働者名簿のテンプレートでは3つ足りない
警察庁の解釈運用基準は、労働者名簿で代替できる場合には別に従業者名簿を作ることを要しない、としています。
つまり1枚にまとめてよいという扱いです。
ただし、市販の労働者名簿の様式をそのまま使うと次の3つが欠けます。
| 労働者名簿(労基法107条) | 従業者名簿(風営法36条) | |
|---|---|---|
| 従事する業務 | 常時30人未満は記入不要(労基則53条2項) | 必ず記載(府令25条) |
| 日雇い | 「日日雇い入れられる者」は除外 | 除外の定めなし |
| 業務委託・派遣 | 労働者でないので対象外 | 記載が必要 |
| 罰則 | 30万円以下(労基法120条1号) | 100万円以下(風営法54条3号) |
| 保存 | 労基法109条 | 退職した日から起算して3年(施行規則106条) |
従事する業務の内容は30人未満でも書く
労働基準法施行規則53条2項は「常時三十人未満の労働者を使用する事業においては」従事する業務の種類を記入しなくてよいとしています。
ほとんどの店がこの規模なので、市販の様式では空欄のまま運用されがちです。
府令25条にはこの緩和がありません。
ホール、キッチン、送迎、接客といった内容を必ず埋めます。
日雇いのヘルプも名簿に載せる
労働基準法107条1項は「各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し」と書いています。
風営法36条にはこの括弧書きがありません。
その日かぎりのヘルプでも従業者名簿には記載が要ります。
日払いの税務上の扱いは日雇いの源泉徴収と丙欄で別に整理しました。
業務委託のキャストも対象になる
法36条が名宛人にしているのは「当該営業に係る業務に従事する者」です。
労働者かどうかで切っていないので、業務委託のキャストも入ります。
加えて、解釈運用基準は記載を要する従業者を「午後10時以降又は深夜に従事する者のみならず、全ての従業者」としています。
昼のランチ営業だけのスタッフも名簿に入ります。
従業者名簿に本人確認の記録もまとめて書ける
接待飲食等営業などでは、客に接する業務に従事させる前に生年月日と国籍の確認が要ります。
根拠は風営法36条の2第1項です。
この記録は、従業者名簿とは別に作らなくてもかまいません。
確認年月日を書いて写しを添付する
風営法施行規則108条1項1号は、確認した事項と確認年月日を従業者名簿に記載し、確認に用いた書類の写しを名簿に添付して保存する方法を認めています。
テンプレートの右側にある確認年月日・国籍・在留資格・在留期間の満了日・資格外活動許可の欄がこれに当たります。
保存期間は名簿と同じく、退職した日から起算して3年です。
運転免許証は確認書類にならない
確認に使える書類は内閣府令26条が決めています。
日本国籍の人については1号イ〜ハで、いずれも本籍地都道府県名の記載が条件になっています。
運転免許証にもマイナンバーカードにも、券面に本籍はありません。
実務では、本籍地入りの住民票記載事項証明書を出してもらう形になります(1号イ)。
採用まわりの手続き全体は風営法の従業者名簿で詳しく扱っています。
従業者名簿の保存期間と電子化
備付けの方法は風営法施行規則にあります。
紙で綴じておく必要はありません。
このテンプレートをExcelのまま運用しても要件を満たせます。
退職した日から起算して3年
風営法施行規則106条は「その従業者が退職した日から起算して三年を経過する日まで」備えておくことを求めています。
起算点は退職の日です。
辞めた人の行を消さずに、退職年月日を入れて残してください。
電磁的方法なら直ちに表示できることが条件
風営法施行規則107条1項は、記載事項が電磁的方法により記録され「必要に応じ電子計算機その他の機器を用いて直ちに表示されることができるとき」は、それをもって名簿に代えられるとしています。
立入りのときにその場で開けることが条件です。
クラウドに置くなら、店のパソコンやタブレットからすぐ表示できる状態にしておきます。
確認書類の写しも、施行規則108条1項2号でスキャナ読取りによる保存が認められています。
まとめ:従業者名簿は1枚にまとめられる
- 項目は7つ:法36条の2つと府令25条の5つ
- 1枚でよい:解釈運用基準が労働者名簿での代替を認めている
- 足りない3つ:従事する業務の内容・日雇い・業務委託や派遣
- 確認記録:施行規則108条1項1号で名簿に書いて写しを添付できる
- 本人確認:本籍地都道府県名の記載が要るので免許証では足りない
- 保存:退職した日から起算して3年。電子データで差し支えない
所轄の警察署が独自の様式を案内している場合は、そちらに合わせてください。
賃金台帳のほうは給与明細テンプレートで別に配布しています。
退職年月日を入れたあとの保存期間は従業員が辞めたときの手続きにまとめています。
採用日と職種は事故の報告でも使います(労働者死傷病報告)。
この記事は条文と警察庁の公表資料をもとにした一般的な整理です。
様式や運用は所轄によって案内が異なるため、具体的な扱いは所轄の警察署に確認してください。
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この記事で参照した一次情報
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(36条・36条の2・54条)
- 風営法に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令(25条・26条)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則(106条・107条・108条)
- 労働基準法(107条・120条)
- 労働基準法施行規則(53条)
- 警察庁 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準(令和8年7月1日付)

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