給与明細は手書きのメモで渡している。
小さい店では珍しくありませんが、賃金台帳としては項目が足りていないことがほとんどです。
法律上、賃金台帳には深夜労働時間数まで書く義務があります(労働基準法施行規則54条)。
市販のテンプレートの多くは「月の労働時間の合計」しか持たないので、この欄が最初からありません。
明細そのものを渡していない状態には罰則もあります(所得税法242条)。
この記事では、時給・深夜割増・日払いに対応した給与明細テンプレート(Excel)を無料で配布し、日またぎと深夜時間が自動で出る仕組みを説明します。
明細を渡していない状態にどんな手続きが用意されているかは、給与明細がもらえないのは違法かで解説しています。
読み終えたら、今月の締めからそのまま使える明細と台帳が手元にあります。
給与明細テンプレートでできること
黄色のセルに入力するだけで、残りは自動で計算されます。
入力するのは時給・深夜割増率・日付・出勤時刻・退勤時刻・休憩時間だけです。
| 自動で出るもの | 内容 |
|---|---|
| 労働時間 | 日をまたぐ勤務も正しく計算 |
| うち深夜時間 | 22時〜翌5時に当たる時間だけを切り出す |
| その日の支給額 | 労働時間×時給+深夜割増 |
| 月の合計 | 労働日数・労働時間・深夜時間・支給額 |
| 差引支給額 | 基本給+深夜割増+バック−日払い済み |
日をまたぐ勤務に対応している
夜の店では20時から翌2時のような勤務が標準です。
ここで多くのExcelが壊れます。
退勤時刻(2:00)が出勤時刻(20:00)より小さいので、単純に引くとマイナスになるからです。
このテンプレートは退勤欄に翌日の時刻をそのまま入れれば正しく計算されます。
「26:00」のような書き方をする必要はありません。
深夜労働時間を自動で切り出す
労働基準法37条4項により、22時から翌5時の労働には25%以上の割増が必要です。
問題は「その日の労働時間のうち、何時間が深夜に当たるか」を毎日数える手間です。
| 勤務 | 労働時間 | うち深夜 |
|---|---|---|
| 20:00 → 翌2:00 | 6.00h | 4.00h |
| 19:30 → 翌0:30 | 5.00h | 2.50h |
| 21:00 → 翌5:00(休憩60分) | 7.00h | 7.00h |
| 18:00 → 22:00(休憩30分) | 3.50h | 0.00h |
この4パターンで計算結果を検証してあります。
手で数えると間違えるところなので、ここが自動なだけでも月末が変わります。
1日分だけ確かめたいときは、ブラウザで動く深夜手当の計算ツールが同じ式で計算します。
この給与明細テンプレートは賃金台帳としても使える
ここが市販のテンプレートと違うところです。
労働基準法108条は賃金台帳の作成を義務づけていて、施行規則54条がその記載事項を定めています。
……四 労働日数 五 労働時間数 六 法第三十三条若しくは法第三十六条第一項の規定によつて労働時間を延長し、若しくは休日に労働させた場合又は午後十時から午前五時……までの間に労働させた場合には、その延長時間数、休日労働時間数及び深夜労働時間数……
労働基準法施行規則 第54条
つまり「今月は何時間働いた」という合計だけでは法定の記録として足りません。
深夜労働時間数を分けて記録する必要があります。
テンプレートの合計欄が、そのまま該当します。
| 施行規則54条の記載事項 | テンプレートの該当箇所 |
|---|---|
| 一 氏名/二 性別 | 基本情報欄(性別は追記してください) |
| 三 賃金計算期間 | 対象月 |
| 四 労働日数 | 合計行の日数 |
| 五 労働時間数 | 合計行の労働時間 |
| 六 深夜労働時間数 | 合計行の「うち深夜時間」 |
| 七 賃金の種類ごとの額 | 集計欄(基本給・深夜割増・バック) |
| 八 控除した額 | 日払い済み |
なお保存期間は当分の間3年です。
労働基準法109条の本則は「五年間」ですが、附則143条1項が「当分の間、三年間とする」と読み替えを定めています。
ファイル名に年月を入れて、月ごとに残しておいてください。
従業員を雇うときの手続き全体は個人事業主が従業員を雇うときにまとめています。
給与明細テンプレートに入れていないもの
あえて計算していない項目があります。
理由も含めて書いておきます。
源泉徴収額は入れていない
給与として払うのか、ホステス等の報酬として払うのかで、計算式がまったく違うからです。
給与なら源泉徴収税額表を使いますが、報酬なら(報酬 − 5,000円×計算期間の日数)× 10.21% という特殊な計算になります。
しかもこの「計算期間の日数」は出勤日数ではなく暦の日数です。
ここを間違えると天引きしすぎます。
詳しくはホステス報酬の源泉徴収で解説しました。
どちらに当たるかは実態で決まるので、税理士か所轄税務署に確認してください。
休憩が深夜にかかる場合は手で調整する
休憩時間は「労働時間」からのみ引いています。
休憩を深夜帯のどこで取ったかまではデータとして持てないためです。
ただし、深夜時間が労働時間を超えないよう上限をかけてあります。
割増を過大に計算してしまう事故は起きません。
深夜帯にしっかり休憩を取っている場合は、「うち深夜時間」を手で減らしてください。
まかないなど現物で渡しているものは、課税される場合に総支給額へ含めます。判定の条件はまかないは課税される?で整理しました。
給与明細テンプレートで足りなくなるとき
正直なところ、このテンプレートで回るのはスタッフが数人までの間です。
次のどれかに当てはまり始めたら、Excelの限界が近づいています。
Excelから移るときに、無料のソフトで足りるのかは先に確かめておきたいところです。
選ぶときに見る5点は給与計算を無料でやる3つの方法と、夜の店で壊れる4か所に整理しています。
その前に、そもそも何をどの順で計算するのかを確かめたい場合は給与計算のやり方を見てください。
引く順番と、源泉所得税で使う欄の判定までまとめてあります。
- スタッフごとにファイルを分けていて、月末に全部開くのが面倒になってきた
- 紙の伝票を見ながら時刻を転記していて、その作業自体に時間がかかっている
- 時給を変えたときに、どのファイルを直したか分からなくなる
- 「渡した/もらっていない」で日払いの記録が食い違う
根っこは同じで、入力がオーナー1人に集中していることです。
スタッフ本人が入れる形にすると、転記もなくなり、記録も残ります。
勤怠の記録だけでよければタイムカードのExcelテンプレートが軽くて使いやすいです。
自分で式を組みたい場合は勤怠管理をエクセルでやる方法に日またぎと深夜の式を載せています。
開業まわりの手続きはスナック開業の手順、年1回の確定申告は水商売の確定申告にまとめています。
まとめ|給与明細テンプレートの使いどころ
- 黄色のセルだけ入力すれば、深夜労働時間まで自動で出ます
- 日をまたぐ勤務に対応。退勤欄に翌日の時刻をそのまま入れてください
- 賃金台帳の記載事項(施行規則54条)を満たす形にしてあります。当分の間3年保存してください
- 源泉徴収額は入れていません。給与か報酬かで式が変わるためです
- 休憩が深夜にかかる場合は「うち深夜時間」を手で調整してください
このテンプレートは一般的な計算を補助するものです。
実際の賃金支払いと税務処理にあたっては、社会保険労務士や税理士に確認してください。
交付義務の根拠と罰則は給与支払明細書不交付の届出で条文ごとに整理しています。
名簿のほうは従業者名簿テンプレートで別に配布しています。
深夜労働時間数を毎月どう持つかはシメルンについてで説明しています。
紙とExcelの給与計算を、LINEだけで終わらせる
シメルンは、スナック・ガールズバー・小さなバーのための給与計算サービスです。スタッフが出勤と退勤の時刻をLINEから入れて、オーナーが確認して確定すると、月末に支給額が出ます。日をまたぐ勤務と深夜割増の計算は、こちらで持ちます。
- アプリのインストールは不要。LINEの中で完結します
- 他のスタッフの時給や支給額は見えません
- オーナーを含めて2人まで、ずっと無料で使えます
はじめてご利用の店舗は、次の締めが終わるまで無料です。カードの登録は要りません。
先に中身を見たい方は シメルンの紹介ページ へ
この記事で参照した一次情報
- 労働基準法(37条4項・108条・109条)
- 労働基準法施行規則(54条)
- 国税庁 No.2807 ホステス等に支払う報酬・料金

コメント