出勤と退勤の時刻から深夜の時間を手で数え直していて、毎月そこで時間を取られている。
退勤時刻のほうが出勤時刻より小さくなるので、引き算では答えが出ません。
時給と出退勤の時刻を入れるだけで、22時から翌5時に当たる深夜労働時間と深夜手当の額を自動で計算します。
20時から翌2時のような日をまたぐシフトにも対応していて、登録は不要です。
夜の店の給与計算がややこしいのは、勤務が日付をまたぐからです。
この記事では、ツールをそのまま使えるように置いたうえで、計算の根拠になる条文も確認します。
読み終えたら、今月の1人分を入力して、いま払っている額と突き合わせられます。
深夜手当の計算ツール
22:00〜翌5:00に当たる時間を1分単位で切り出します。退勤が出勤より前なら翌日として計算します。
計算した内容はどこにも送信していません。
すべてブラウザの中だけで処理しています。
深夜手当の計算ツールの使い方
入れるのは時給・出勤・退勤・休憩の4つだけです。
シフトを追加すれば、複数日をまとめて合計できます。
1か月分をまとめて出したいときにも使えます。
退勤が出勤より前なら、翌日として計算する
出勤20:00・退勤2:00と入れれば、翌日の2時として6時間で計算します。
「26:00」のような書き方をする必要はありません。
日をまたいだ行には「翌日」のしるしが出るので、入力を間違えていないかその場で分かります。
| 勤務 | 労働時間 | うち深夜 |
|---|---|---|
| 20:00 → 翌2:00 | 6時間 | 4時間 |
| 19:30 → 翌0:30 | 5時間 | 2時間30分 |
| 21:00 → 翌5:00(休憩60分) | 7時間 | 7時間 |
| 18:00 → 22:00(休憩30分) | 3時間30分 | 0分 |
この4パターンは給与明細テンプレートと同じ結果になるよう検証してあります。
ツールとExcelで数字が食い違うことはありません。
1日8時間を超えた分は時間外に切り替わる
労働基準法32条は1日8時間・1週40時間を上限としています。
これを超えた分は時間外労働になり、深夜とは別に割増が要ります。
ツールでは初期状態でこれを計算に入れています。
ただし見ているのは1日8時間超だけです。
週40時間を超えた分や、月60時間を超えた分の割増は含めていません。
そこまで必要な場合は社会保険労務士に確認してください。
深夜手当の計算式と、割増率25%の根拠
深夜手当の式そのものは単純です。
1時間あたりの賃金 × 深夜の労働時間数 × 0.25。
難しいのは式ではなく、「深夜の労働時間数が何時間なのか」を正しく数えるところです。
月給制で単価をどう出すかを含めた全体像は深夜手当とは?割増率と計算方法にまとめました。
深夜は22時から翌5時(労働基準法37条4項)
使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
労働基準法 第37条4項
「二割五分以上」なので、25%は上限ではなく下限です。
店の規則でこれより高く定めているなら、そちらが優先されます。
ツールの割増率を変えられるようにしてあるのはそのためです。
時間帯そのものの話は深夜手当は何時から何時までかで詳しく書きました。
なお、この条文は深夜労働そのものを禁じてはいません。
18歳未満の年少者など別の制限がかかる人はいますが、成人の深夜勤務は割増を払えば適法です。
割増の基礎に入れない手当がある
時給制なら「1時間あたりの賃金=時給」でそのまま計算できます(労働基準法施行規則19条1項1号)。
月給制の場合は、月給を1か月あたりの所定労働時間数で割って時間あたりの単価を出します。
ここで注意が要るのが、割増賃金の基礎に入れてはいけない賃金があることです。
法37条5項と施行規則21条が、次のものを除外しています。
- 家族手当・通勤手当(法37条5項)
- 別居手当・子女教育手当・住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
ただし名前が「家族手当」「住宅手当」なら自動的に外れる、というものではありません。
東京労働局の資料は、家族の人数や家賃に応じて金額が変わるものだけが除外され、全員に一律定額で払っているものは月給に含めると説明しています。
名目ではなく中身で決まります。
同じ理由で、指名バックや同伴バックの扱いも判断が分かれるところです。
歩合的な支払いがある場合は、税理士か社会保険労務士に一度見てもらってください。
深夜手当が1.5倍になるのはどんなときか
深夜と時間外が重なると、割増も重なります。
19時に入って翌5時まで、休憩1時間なら労働は9時間。
このとき最後の1時間(4:00〜5:00)は深夜であり、同時に8時間を超えた時間外でもあります。
組み合わせごとの最低の割増率は、法37条1項・割増賃金令・施行規則20条で決まっています。
| 働いた時間 | 支払う倍率 | 根拠 |
|---|---|---|
| 深夜だけ | 1.25倍 | 法37条4項 |
| 時間外だけ | 1.25倍 | 平成6年政令第5号 |
| 深夜+時間外 | 1.5倍 | 施行規則20条1項 |
| 休日だけ | 1.35倍 | 平成6年政令第5号 |
| 休日+深夜 | 1.6倍 | 施行規則20条2項 |
1.25×1.25にはならない
ここを掛け算だと思っている人が多いのですが、1.25×1.25=1.5625ではありません。
割増部分どうしを足すのが正しい形です。
通常の賃金1.0に、時間外の割増0.25と深夜の割増0.25を足して1.5。
施行規則20条1項が「五割以上」と書いているのはこの意味です。
ツールの結果で「基本の賃金」「時間外の分」「深夜割増」を分けて出しているのも、この足し算が見えるようにするためです。
ちなみに時間外が月60時間を超えると、超えた部分は法37条1項ただし書で5割以上になります。
それが深夜と重なると施行規則20条1項の後段で7割5分以上です。
ここまで来るとツールの範囲を超えるので、専門家に相談してください。
休日労働まで含めた組み合わせ全体は深夜割増賃金の割増率で一覧にしています。
深夜手当の計算でよくある3つの間違い
計算式は合っているのに支払額が足りない、というケースには型があります。
夜の店で特に多いものを3つ挙げます。
どれも悪意なく起きるので、心当たりがあれば早めに直しておくほうが安全です。
15分単位・30分単位で切り捨てている
「2時13分上がりだけど2時でつけとくね」。
これがいちばん多い間違いです。
労働時間は1分単位で計算するのが原則で、日ごとの切り捨ては認められていません。
行政通達(昭和63年3月14日付け基発150号)が例外として認めているのは、次の範囲だけです。
以下の範囲であれば、賃金不払いの法違反として取り扱わないこととしています。日ごとに端数処理することはできません。
山口労働局「労働時間の『切り捨て』はダメ!」(基発150号の内容)
① 労働時間の端数処理 1か月における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること
② 割増賃金の端数処理 1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げること
ポイントは「1か月における」「合計に」の部分です。
丸められるのは月の合計に対して1回だけで、しかも30分以上は切り上げなければなりません。
日ごとに15分ずつ落とすのは、この例外に当てはまりません。
このツールが1分単位で計算しているのはそのためです。
切り捨てたいときは、月の合計が出てから判断してください。
店長だから深夜手当は要らないと思っている
「あの子はチーフだから残業も深夜もなし」という運用を見かけますが、条文の作りはそうなっていません。
労働基準法41条が適用を外しているのは、次の範囲です。
この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
労働基準法 第41条
「深夜業」は、この3つのどこにも入っていません。
深夜割増を定めた37条4項は外れていない、という読み方になります。
そもそも41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」に当たるかどうかは、肩書きではなく実態で判断されます。
役職名を付ければ手当を払わなくてよくなる、という話ではありません。
該当するかどうか迷う場合は、所轄の労働基準監督署に確認してください。
深夜に取った休憩を引いていない
休憩は労働時間ではないので、深夜の時間数からも外れます。
21時から翌5時の勤務で、深夜帯の0時に1時間休んだなら、深夜労働は7時間ではなく6時間です。
このツールは休憩をどの時間帯に取ったかまでは持てないので、休憩を労働時間からだけ引いています。
そのかわり、深夜時間が労働時間を超えないよう上限をかけてあります。
割増を過大に計算してしまうことはありません。
深夜帯にはっきり休憩を取っている場合は、その分を差し引いて考えてください。
深夜手当を毎月ミスなく出すには
1日分なら暗算でもなんとかなります。
問題は月末です。
スタッフ5人×20日で100回、同じ計算をすることになります。
ここを人力でやっている限り、いつか必ずどこかが狂います。
そして深夜労働時間は、計算するだけでなく記録に残す義務があります。
労働基準法108条が賃金台帳の作成を義務づけ、施行規則54条6号がその記載事項として深夜労働時間数を挙げています。
保存期間は当分の間3年です(法109条の本則は5年ですが、附則143条1項で読み替えられています)。
月単位でまとめて残すなら、給与明細テンプレート(Excel・無料)を使ってください。
このツールは深夜手当だけを計算するものなので、源泉徴収まで含めた毎月の給与計算は別の仕組みが要ります。
無料で回す方法とその限界は給与計算を無料でやる3つの方法で比べました。
このツールと同じ計算式で、賃金台帳の記載事項を満たす形にしてあります。
従業員を雇うときの手続き全体は個人事業主が従業員を雇うときにまとめました。
なお深夜手当と源泉徴収はまったく別の話です。
給与として払うのか、ホステス等の報酬として払うのかで天引きの計算式が変わります。
詳しくはホステス報酬の源泉徴収を読んでください。
年1回の申告は水商売の確定申告にまとめています。
まとめ|深夜手当の計算で押さえること
- 深夜は22時から翌5時。割増は25%以上(労働基準法37条4項)。25%は下限です
- 日をまたぐ勤務は、退勤時刻をそのまま入れれば計算できます。26時のような書き方は不要です
- 深夜と時間外が重なると1.5倍。掛け算ではなく、割増部分の足し算です
- 労働時間は1分単位。日ごとの切り捨てはできません(基発150号)
- 役職者にも深夜割増は必要です。41条が外しているのは労働時間・休憩・休日だけです
このツールは一般的な計算を補助するものです。
実際の賃金の支払いにあたっては、社会保険労務士や所轄の労働基準監督署に確認してください。
週40時間超・月60時間超の割増、社会保険料、源泉徴収は含んでいません。
歩合給がある場合の割増は基礎の出し方が変わります(歩合給と最低賃金)。
毎月の締めごと自動化したい場合はシメルンについてをご覧ください。
紙とExcelの給与計算を、LINEだけで終わらせる
シメルンは、スナック・ガールズバー・小さなバーのための給与計算サービスです。スタッフが出勤と退勤の時刻をLINEから入れて、オーナーが確認して確定すると、月末に支給額が出ます。日をまたぐ勤務と深夜割増の計算は、こちらで持ちます。
- アプリのインストールは不要。LINEの中で完結します
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先に中身を見たい方は シメルンの紹介ページ へ
この記事で参照した一次情報
- 労働基準法(32条・37条1項/4項/5項・41条・108条・109条)
- 労働基準法施行規則(19条・20条・21条・54条)
- 労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(平成6年政令第5号)
- 山口労働局「労働時間の『切り捨て』はダメ!」(昭和63年3月14日付け基発150号の内容・PDF)

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