報酬から1割引いておけばいいと聞いて、そのまま計算している。
ホステス報酬は、給与ともフリーランスへの報酬とも計算式が違います。
ホステス報酬の源泉徴収では給与の税額表を使わず、(報酬−5,000円×計算期間の日数)×10.21%で計算します。
そして、この計算で最も多い間違いが「5,000円×日数」の日数を出勤日数で数えてしまうことです。
国税庁は、ここを名指しで「営業日数でも出勤日数でもない」と書いています。
この記事では条文と国税庁の計算例で、正しい数え方を確かめます。
読み終えたら、今月の報酬から引く額を、正しい日数で計算し直せます。
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ホステス報酬の源泉徴収が必要になる場合
まず、自分の店が対象かどうかです。
所得税法204条1項6号は、対象をこう定めています。
キャバレー、ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設でフロアにおいて客にダンスをさせ又は客に接待をして遊興若しくは飲食をさせるものにおいて客に侍してその接待をすることを業務とするホステスその他の者……のその業務に関する報酬又は料金
所得税法 第204条第1項第6号
国税庁の案内では、次の場合が該当するとされています(国税庁 No.2807)。
- バーやキャバレーの経営者が、そこで働くホステスなどに報酬・料金を支払う場合
- バンケットホステス・コンパニオン等をホテル、旅館その他飲食をする場所に派遣して接待等の役務の提供を行わせる事業者が、その報酬・料金を支払う場合
ただし、支払いの内容が給与等に該当する場合は、給与所得として源泉徴収します。
報酬か給与かは実態で決まるもので、店が選べるものではありません。
時給で働いてもらっていて指揮命令もある、という形なら給与に当たる可能性が高くなります。
迷ったら税理士か所轄税務署に確認してください。
業務委託契約にすれば報酬になる、というものでもありません。
契約の形と実態がずれたときに何が起きるかはキャバクラの業務委託が認められる条件で裁判例と合わせて整理しています。
ここを間違えると、以降の計算がすべてずれます。
ホステス報酬の源泉徴収の計算式
計算式はこうです。
所得税法205条2号と施行令322条にもとづくもので、復興特別所得税を含めた税率が10.21%になります。
(報酬・料金の額 − 5,000円 × 計算期間の日数)× 10.21%
ポイントは控除額の部分です。
施行令322条は、控除する金額をこう定めています。
五千円に当該支払金額の計算期間の日数を乗じて計算した金額(当該報酬又は料金の支払者が当該報酬又は料金の支払を受ける者に対し法第二十八条第一項に規定する給与等の支払をする場合には、当該金額から当該期間に係る当該給与等の額を控除した金額)
所得税法施行令 第322条
「計算期間の日数」は出勤日数ではない
ここが最大の落とし穴です。
国税庁は明確にこう書いています。
この「計算期間の日数」とは、「営業日数」または「出勤日数」ではなく、ホステス報酬の支払金額の計算の基礎となった期間の初日から末日までの全日数です。
国税庁 No.2807 ホステス等に支払う報酬・料金
月末締めで1か月分をまとめて払うなら、その月の暦の日数を使います。
3月なら31日、4月なら30日。
そのスタッフが何日出勤したかは関係ありません。
出勤日数で計算すると控除額が小さくなるので、本来より多く天引きしてしまいます。
スタッフの手取りが減る方向の間違いなので、気づかれにくい割に影響が大きい部分です。
国税庁の計算例で確かめる
国税庁が挙げている例です。
あえて営業日数が併記されているのは、そこを使わないことを示すためです。
| 計算の基礎期間 | 3月1日〜3月31日(31日間) |
| 営業日数 | 25日間(計算には使わない) |
| 3月分の報酬 | 75万円 |
| 控除額 | 5,000円 × 31日 = 15万5,000円 |
| 源泉徴収税額 | (75万円 − 15万5,000円)× 10.21% = 60,749円 |
もし営業日数の25日で計算すると控除額は12万5,000円になり、税額は63,812円。
3,000円ほど多く引きすぎることになります。
1人あたり月3,000円でも、5人いれば年間18万円のずれです。
なお、求めた税額に1円未満の端数があるときは切り捨てます。
同じ月に給与も払っている場合
同じ人に、同じ月に給与も支払っているときは、控除額からその計算期間の給与の額を差し引きます(施行令322条の括弧書き)。
たとえば3月分の控除額15万5,000円のうち、給与を8万円払っているなら、報酬から引ける控除額は7万5,000円になります。
控除を二重に使わせないための調整です。
給与と報酬を両方払う形にしている店は、ここを忘れないでください。
ホステス報酬の源泉徴収で見落とされやすいもの
「報酬」として認識されにくいのに、対象に含まれるものがあります。
国税庁が名指ししているものと、条文で特別に定められているものです。
報奨金・衣装代・深夜のタクシー代も対象
国税庁は、源泉徴収の対象となる報酬・料金に含まれるものとして、次の2つを挙げています。
- 報奨金や衣装代
- 深夜帰宅するためのタクシー代
タクシー代は「経費を立て替えただけ」と考えられがちですが、報酬として扱われます。
夜の業態では毎日発生する費目なので、積み上がると無視できない額になります。
指名料や同伴のバックも、報酬として支払っているなら同じく対象です。
客から店を通して渡されるチップ
客が店を通してホステスに渡すお金についても、条文に定めがあります。
第一項第六号に掲げる報酬又は料金のうちに、客からバー等の経営者を通じてホステス等に支払われるものがある場合には、当該報酬又は料金については、当該バー等の経営者を当該報酬又は料金に係る同項に規定する支払をする者とみなし……
所得税法 第204条第3項
つまりお金の出どころが客であっても、店を経由して渡すなら、店が支払者として源泉徴収するということです。
「客からの心付けを預かって渡しただけ」は通りません。
ホステス報酬の納付期限|納期の特例は使えない
源泉徴収した所得税は、支払った月の翌月10日までに納付します。
ここまでは通常どおりですが、小規模な事業者がよく使う制度に例外があります。
従業員10人未満の事業者は「源泉所得税の納期の特例」を申請すると、毎月ではなく年2回にまとめて納付できます(申請そのものは個人事業主が従業員を雇うときの届出にまとめています)。
ただしホステス報酬はこの特例の対象外です。
なお、支払者が源泉所得税の納期の特例の適用を受けている場合であっても、ホステス等に支払う報酬・料金については、納期の特例の対象とはなりませんのでご注意ください。
国税庁 No.2807
特例を申請しているから半年に1回でいい、と思い込んでいると納付漏れになります。
給与の分は半年に1回、ホステス報酬の分は毎月10日。
同じ店の中で納付のリズムが2つ走ることになるので、カレンダーに入れておいてください。
ホステス報酬の支払調書は年間50万円超から
年が明けたら「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を税務署に提出します。
ホステス等の報酬については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるものが提出範囲です(国税庁 No.7431)。
そのためにはスタッフごとの年間支払額が集計できていることが前提になります。
月々の支払いを記録に残していれば自動的に揃いますが、伝票と現金だけで回していると年明けに1年分を数え直すことになります。
なお、税務署に出す支払調書にはマイナンバーの記載が必要ですが、受給者に写しを交付する場合はマイナンバーを記載できません。
同じ書類でも扱いが違うので注意してください。
まとめ|ホステス報酬の源泉徴収で外さない点
間違いが起きやすい順に並べます。
- 「計算期間の日数」は暦の日数。営業日数でも出勤日数でもない
- 納期の特例を受けていても、ホステス報酬は毎月10日納付
- 報奨金・衣装代・深夜のタクシー代も対象
- 客から店を通して渡すお金も、店が支払者として源泉徴収する
- 同じ月に給与も払っているなら、控除額から給与額を差し引く
- 支払調書は同一人・年間50万円超から
- そもそも報酬か給与かは実態で決まる。ここを先に確かめる
店側とスタッフ側の確定申告については、水商売の確定申告で整理しています。
開業時の届出はスナック開業の手順へ。
納付のタイミングは給与と別です。詳しくは源泉所得税の納期の特例で扱っています。
給与として払う日払いとの違いは日雇いの源泉徴収と丙欄で税額まで比べています。
年明けに出す調書の範囲はホステス報酬の支払調書にまとめています。
この記事は条文と国税庁の案内をもとに書いていますが、報酬か給与かの判定は個別の事情で結論が変わり、判定を誤ると納付額そのものがずれます。
実際の処理にあたっては税理士か所轄税務署に確認してください。
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この記事で参照した一次情報
- 所得税法(204条1項6号・204条3項・205条2号)
- 所得税法施行令(322条)
- 国税庁 No.2807 ホステス等に支払う報酬・料金
- 国税庁 No.7431 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等

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