支払調書は5万円を超えたら出すものだと思って、全員分を用意しようとしている。
ホステス報酬については、この前提が違います。
ホステス報酬の支払調書は、年50万円を超えた人の分だけ提出します。
所得税法施行規則84条2項が、所得税法204条1項6号だけを別の号で扱っていて、基準が10倍違うためです。
検索して出てくる「支払調書は5万円超から」という説明は、ホステス報酬には当てはまりません。
この記事では、提出の範囲と書く項目、期限と罰則を条文で整理します。
読み終えたら、今年の支払いのうち誰の分を出すのかを、名簿から選び出せます。
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ホステス報酬の支払調書は50万円超から
提出義務そのものは所得税法225条1項3号にあります。
204条1項各号の報酬・料金を支払う者は、支払調書を税務署長に提出しなければなりません。
そのうえで、出さなくてよい場合を施行規則が決めています。
施行規則84条2項が6号だけを別扱いにしている
一 同一人に対するその年中の法第二百四条第一項第三号に掲げる診療報酬、同項第四号に掲げる職業拳けん闘家、外交員、集金人若しくは電力量計の検針人の業務に関する報酬若しくは料金又は同項第六号に掲げる報酬若しくは料金の支払金額が五十万円以下である場合
所得税法施行規則84条2項1号
この1号に並んでいるのが、診療報酬・プロボクサー・外交員・集金人・検針人、そして6号のホステス等です。
これらは50万円以下なら提出が要りません。
一般の報酬は5万円超。10倍の差がある
同じ84条2項の4号が、それ以外の報酬をまとめて扱っています。
「前三号に規定する報酬等以外の報酬等の支払金額が五万円以下である場合」は提出不要という書き方です。
| 支払の種類 | 根拠 | 提出しなくてよい金額 |
|---|---|---|
| 原稿料・デザイン料(1号) | 規則84条2項4号 | 年5万円以下 |
| 弁護士・税理士等の報酬(2号) | 規則84条2項4号 | 年5万円以下 |
| ホステス等の報酬(6号) | 規則84条2項1号 | 年50万円以下 |
| 広告宣伝のための賞金(8号) | 規則84条2項2号 | 年50万円以下 |
顧問税理士への報酬は5万円超で1枚要るのに、キャストは50万円までは要らないという形になります。
源泉徴収は1円から。調書だけが50万円
混同しやすいので分けておきます。
50万円は支払調書を出すかどうかの基準であって、源泉徴収をするかどうかの基準ではありません。
源泉徴収のほうは、1回の支払から5,000円×計算期間の日数を引いた残りに10.21%をかけます。
計算の詳細はホステス報酬の源泉徴収にまとめています。
支払調書に書く5項目と提出先
記載事項は施行規則84条1項に並んでいます。
全部で5つです。
集める情報が1つあるので、年末に慌てないよう先に確認しておいてください。
記載事項にマイナンバーが入っている
- 1号:支払を受ける者の氏名・住所または居所、及び個人番号
- 2号:その年中に支払の確定した報酬等の金額
- 3号:2号の報酬等につき源泉徴収をされる所得税の額
- 4号:報酬等の204条1項各号に規定する区分
- 5号:その他参考となるべき事項
1号に個人番号が明記されているので、対象になるキャストからはマイナンバーを取得しておく必要があります。
4号の「区分」には、ホステス報酬であることが分かる記載をします。
提出先は納税地ではなく支払事務の場所
提出先も84条1項が決めています。
「その支払をする者の事務所、事業所その他これらに準ずるものでその報酬等の支払事務を取り扱うものの所在地の所轄税務署長」です。
本社の納税地ではなく、支払いの事務をしている場所で決まります。
店ごとに給与計算をしている場合は、提出先が分かれることがあります。
支払調書の提出期限は1月31日
期限は所得税法225条1項の本文にあります。
支払の確定した日の属する年の翌年1月31日までです。
給与の源泉徴収票や法定調書合計表と同じタイミングになります。
出さないと1年以下・50万円以下
罰則は所得税法242条5号です。
225条1項の調書を提出期限までに税務署長に提出せず、または偽りの記載をして提出した者は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金とされています。
源泉徴収票の未提出と同じ号にまとめられています。
納付のほうの期限は別なので、源泉所得税の納期の特例とあわせて確認してください。
12月に確定した分は翌年に回らない
225条1項は「支払の確定した日」を基準にしています。
12月末で締めて1月に払うバックは、確定が12月なら前年分として集計します。
締め日と支払日がずれている店は、ここで年をまたぐ分の扱いを決めておいてください。
支払調書は本人に渡す義務がない
キャストから「支払調書をください」と言われることがあります。
確定申告に使いたいという理由がほとんどです。
ただし、渡す義務は条文にありません。
源泉徴収票との決定的な違い
所得税法226条は、源泉徴収票について税務署長への提出と本人への交付の両方を定めています。
242条6号は、その交付をしなかった場合を罰則の対象にしています。
これに対して225条1項の支払調書には、本人への交付を求める規定がありません。
罰則の242条5号も「税務署長に提出せず」だけを対象にしています。
渡してはいけないわけではない
義務が無いだけで、渡すこと自体は問題になりません。
ただし税務署提出用にはマイナンバーを記載するので、本人に渡す控えにはマイナンバーを書かないでください。
キャスト側は、支払調書が無くても自分の記録と支払明細で確定申告ができます。
店として渡すなら、支払額と源泉徴収税額を書いた支払明細のほうが実務的です。
給与で払っているなら支払調書ではない
最後に、そもそも支払調書を作る相手かどうかを確認します。
同じキャストでも、支払いが給与なら別の書類になります。
根拠は204条2項1号です。
給与等に該当するものは204条の対象外
204条2項1号は、報酬・料金のうち給与等に該当するものを204条1項の適用から外しています。
施行規則84条1項も、204条2項各号に掲げるものを「報酬等」から除いています。
つまり雇用して時給で払っているなら、作るのは支払調書ではなく源泉徴収票です。
給与か報酬かの判断はキャストの業務委託で裁判例を並べて整理しました。
時給とバックの両建てなら2枚になる
時給は給与、バックは報酬という払い方をしている店もあります。
この場合、同じ人について源泉徴収票と支払調書の両方が出ることになります。
それぞれの提出基準で判定するので、片方だけ対象になることもあります。
なお両建ての場合、源泉徴収の5,000円の控除額も給与の分だけ減ります(所得税法施行令322条の括弧書き)。
まとめ:ホステス報酬の支払調書で押さえる5点
- 基準は50万円超:施行規則84条2項1号。一般の報酬の5万円超とは別枠
- 源泉徴収は別:50万円は調書の基準であって、徴収は1回目から必要
- 記載事項は5つ:マイナンバーが入っているので先に集めておく
- 提出先:納税地ではなく支払事務を取り扱う事務所の所在地
- 期限と罰則:翌年1月31日。未提出は242条5号で1年以下・50万円以下
- 交付義務なし:源泉徴収票と違い、本人に渡す義務は条文にない
11月のうちに、年50万円を超えそうな人を洗い出しておくと1月が楽になります。
毎月の計算の流れは給与計算のやり方にまとめています。
この記事は条文と国税庁の公表資料をもとにした一般的な整理です。
給与か報酬かの判断や個別の記載方法は事情によって結論が変わるため、具体的な処理は所轄の税務署または税理士に確認してください。
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この記事で参照した一次情報
- 所得税法(204条・225条・226条・242条)
- 所得税法施行規則(84条)
- 所得税法施行令(322条)
- 国税庁 No.7431 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等

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