健康診断は年1回やっていれば足りると思っている。
夜に営業している店では、この回数が足りません。
深夜に働く人がいる店の健康診断は、6月以内ごとに1回です。
労働安全衛生規則13条1項3号ヌが「深夜業を含む業務」を特定業務に挙げていて、同規則45条がその従事者に6月以内ごとの健康診断を求めているためです。
夜の店はほぼ全員がこの対象に入ります。
やらなければ労働安全衛生法120条1号で50万円以下の罰金です。
この記事では、誰が対象で、何を何回やるのか、そして深夜業だけにある制度までを条文で整理します。
読み終えたら、自分の店で次にいつ誰の健診を受けさせるかが決まります。
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深夜業がある店の健康診断は年1回では足りない
健康診断の回数は、業務の種類で変わります。
ふつうの職場は年1回ですが、特定業務に従事する人は年2回です。
その特定業務の一覧に、深夜業が入っています。
| 種類 | 対象 | 回数 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 雇入時の健康診断 | 常時使用する労働者 | 雇入れの際 | 安衛則43条 |
| 定期健康診断 | 常時使用する労働者(特定業務従事者を除く) | 1年以内ごとに1回 | 安衛則44条 |
| 特定業務従事者の健康診断 | 深夜業を含む業務に常時従事する労働者 | 6月以内ごとに1回 | 安衛則45条 |
「深夜業」は22時から翌5時まで
労働安全衛生法66条の2が、深夜業を午後10時から午前5時までと定義しています。
深夜割増を払う時間帯(労基法37条4項)と同じ区切りです。
風営法の「深夜」は午前0時から午前6時なので、ここは別の線になります。
4本の時間の線の使い分けはガールズバーの営業時間で表にしています。
22時を過ぎて営業していればほぼ全員が対象
スナックもバーもガールズバーも、22時をまたがない店はまずありません。
つまり出勤しているスタッフは、働き方の上では全員が特定業務従事者です。
一般の会社で年1回とされているものが、夜の店では倍になると考えてください。
なお「常時従事する」に当たるかは勤務の実態で判断されるため、回数が少ない人の扱いは所轄の労働基準監督署に確認してください。
深夜業の健康診断で年2回になるのは全項目ではない
ここは誤解されやすいところです。
安衛則45条1項は、44条1項各号の項目を6月以内ごとに行うと定めています。
ただし同じ条文に、後段で例外が置かれています。
……当該業務への配置替えの際及び六月以内ごとに一回、定期に、第四十四条第一項各号に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。この場合において、同項第四号の項目については、一年以内ごとに一回、定期に、行えば足りるものとする。
労働安全衛生規則45条1項
胸部エックス線は年1回でよい
44条1項4号は、胸部エックス線検査と喀痰検査です。
ここだけは1年以内ごとに1回で足ります。
レントゲンを年2回撮る必要はない、ということです。
健診機関に申し込むときは、2回目が省略できる項目を先に伝えておくと費用が変わります。
配置替えのときにも1回要る
45条1項は「当該業務への配置替えの際」も実施のタイミングに挙げています。
昼のランチ担当だったスタッフを夜のシフトに移すときは、そこで1回必要になります。
雇入時の健康診断(安衛則43条)とは別のタイミングです。
令和9年4月1日から項目が変わる
厚生労働省のリーフレットは、令和9年4月1日適用の項目表を載せています。
- 追加:血清クレアチニン検査
- 削除:喀痰検査
- 変更:肝機能検査の酵素名(γ―GTP から γ―GT へ)
いま出回っている解説記事の項目表は、令和9年3月までのものです。
健診機関のコースを決めるときは、適用日を確かめてください。
健康診断の対象になるのは誰か
次に、キャストやアルバイトが入るかどうかです。
条文の言葉は「常時使用する労働者」で、正社員に限るとは書かれていません。
厚生労働省が定義を示しています。
常時使用する労働者とは、契約期間が1年以上(予定を含む)で、1週間の労働時間が同種の業務に従事する通常の労働者の3/4以上の労働者です。
厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」(2026年4月)
4分の3基準は社会保険と同じ形
週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上、という数え方です。
社会保険の加入判定と同じ形なので、判断の材料は共通して使えます。
週2〜3日だけ入るキャストは、この基準では外れることが多くなります。
社会保険側の判定は飲食店の社会保険 加入条件にまとめています。
業務委託のキャストは対象外になる
健康診断の義務は「労働者」に対するものです。
本当に業務委託であれば、安衛法66条の対象には入りません。
ただし契約書の名前ではなく実態で判断されるので、そこが崩れると義務も戻ってきます。
労働者性の判断材料はキャバクラの業務委託は可能かで裁判例から整理しました。
深夜業だけにある自発的健康診断という制度
4分の3に届かない人にも、別の入口が用意されています。
労働安全衛生法66条の2の自発的健康診断です。
これは深夜業に従事する労働者のためにだけ置かれた仕組みです。
月4回以上の深夜業が要件
要件は安衛則50条の2が数字で定めています。
法第六十六条の二の厚生労働省令で定める要件は、常時使用され、同条の自ら受けた健康診断を受けた日前六月間を平均して一月当たり四回以上同条の深夜業に従事したこととする。
労働安全衛生規則50条の2
週1日だけ出ているスタッフでも、月4回から5回にはなります。
この人が自分で健康診断を受けて、その結果を書面で店に提出できる、という制度です。
提出されたら店の義務が動き出す
受け取って終わりではありません。
安衛則51条は、自発的健康診断の結果も健康診断個人票を作って5年間保存する対象に入れています。
安衛法66条の4の医師からの意見聴取も、自発的健康診断の結果を含めて求められます。
つまり店が実施していない健診でも、出された時点で事後措置の義務が発生します。
6か月分の出勤記録がないと判定できない
「6月間を平均して1月当たり4回以上」という要件は、出勤記録から数えるしかありません。
しかも数えるのは出勤日数ではなく、22時から翌5時にかかった日数です。
深夜割増の計算で使う記録がそのまま判定材料になります。
記録の取り方は深夜手当は何時から?で扱っています。
健康診断のあとに店がやること
実施して終わりではありません。
厚生労働省は、実施後の取組を6つ挙げています。
このうち3つには罰則が付いています。
| やること | 根拠 | 罰則 |
|---|---|---|
| 健康診断個人票を作り5年間保存する | 安衛法66条の3/安衛則51条 | あり |
| 異常の所見があれば医師の意見を聴く | 安衛法66条の4 | なし |
| 必要なら就業場所の変更・労働時間の短縮等 | 安衛法66条の5 | なし |
| 結果を本人に通知する | 安衛法66条の6 | あり |
| 必要な人に保健指導を行うよう努める | 安衛法66条の7 | 努力義務 |
| 常時50人以上なら労働基準監督署へ報告 | 安衛則52条 | — |
事後措置に「深夜業の回数の減少」が明記されている
安衛法66条の5は、講ずべき措置の例を条文の中に並べています。
就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、そして深夜業の回数の減少です。
深夜業が条文に名指しで出てくるのは、夜の働き方が健康に効くと法が見ているからです。
シフトを組み直すことが、そのまま法令上の措置になります。
報告義務は常時50人以上から
安衛則52条は、常時50人以上の労働者を使用する事業者に報告を求めています。
ほとんどの店は50人に届かないので、報告そのものは要りません。
ただし実施義務と保存義務は人数に関係なくかかります。
「うちは小さいから」で外れるのは報告だけです。
健康診断をやらないと50万円以下の罰金
罰則は労働安全衛生法120条1号にまとまっています。
この号が引いている条文のなかに、健康診断まわりが3つ入っています。
いずれも50万円以下の罰金です。
- 66条1項から3項:健康診断を実施しなかったとき
- 66条の3:結果の記録を作らなかったとき
- 66条の6:結果を本人に通知しなかったとき
受けさせる義務と受ける義務は両方ある
安衛法66条5項は、労働者側にも受診の義務を課しています。
ただし同項ただし書で、他の医師による健康診断を受けて結果を証明する書面を提出すれば足りるとされています。
「行きたくない」と言われたときは、この道を案内するのが実務です。
店が何もしないまま放置すると、罰則を受けるのは店の側になります。
風営法の管理者の欠格とはつながらない
風営法4条1項2号トが引いているのは労働基準法の罰条です。
労働安全衛生法違反はそこに入っていないので、健診をやらなかっただけで許可が取れなくなるわけではありません。
ただし労働基準監督署の是正勧告は残りますし、労災が起きたときの評価にも効きます。
欠格につながる労基法違反のほうは風俗営業の管理者で整理しました。
まとめ:深夜業の健康診断で外さない点
- 回数:深夜業を含む業務に常時従事する人は6月以内ごとに1回(安衛則45条)
- 例外:44条1項4号(胸部エックス線・喀痰)だけは1年以内ごとに1回で足りる
- タイミング:配置替えの際にも1回。昼から夜のシフトへ移すときが該当する
- 対象:契約1年以上(予定を含む)かつ週の労働時間が通常の労働者の4分の3以上
- 自発的健康診断:6月間を平均して月4回以上の深夜業があれば本人が結果を提出できる
- 保存:健康診断個人票(様式第5号)を5年間
- 事後措置:条文に「深夜業の回数の減少」が明記されている
- 罰則:実施・記録・通知の3つに50万円以下の罰金(安衛法120条1号)
- 令和9年4月1日:血清クレアチニン検査が追加、喀痰検査が削除
誰が対象かも、いつやるかも、出勤記録を見ないと決まりません。
深夜割増のために付けている記録が、そのまま健診の名簿になります。
この記事は条文と厚生労働省の公表資料をもとにした一般的な整理です。
「常時従事する」に当たるかは勤務の実態で結論が変わるため、具体的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。
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- 他のスタッフの時給や支給額は見えません
- オーナーを含めて2人まで、ずっと無料で使えます
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この記事で参照した一次情報
- 労働安全衛生法(66条・66条の2〜66条の7・120条)
- 労働安全衛生規則(13条・43条・44条・45条・50条の2・51条・52条)
- 厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」(2026年4月)
- 労働基準法(37条4項)

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