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キャバクラの売掛金|店が負わせられない範囲と2025年の改正

キャバクラの売掛金|店が負わせられない範囲と2025年の改正を解説する記事のアイキャッチ

客が飛んだぶんのツケを、担当したキャストの給料から引いている。

昔からの慣習として残っている店がありますが、ここは法律が動いた部分です。

客のツケを従業員に負わせる運用は、2025年の改正で罰則つきの禁止行為に近づきました。

もともと風営法18条の2が、支払能力に照らして不相当に高額の債務を接客従業者に負わせることを禁じています。

そこへ22条の2が加わり、料金の支払いをさせる目的で威迫して困惑させることが罰則つきで禁止されました。

さらに給与から天引きする形をとると、労働基準法の全額払いにも触れます。

この記事では、店が売掛をどう扱えるのか、やってはいけない回収方法は何かを条文で整理します。

読み終えたら、いまの売掛の回収方法を、罰則に触れない形に組み直せます。

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目次

売掛金は本来、店と客の間の債権

整理の出発点を確認します。

客がその場で払わなかった飲食代は、店が客に対して持つ債権です。

キャストは店に雇われている、あるいは店から報酬を受けている側なので、客の債務とは本来無関係です。

「キャストの売掛」は店が作った仕組み

実務では、指名したキャストに回収の責任を負わせる運用が広く行われてきました。

客が払わなければキャストの報酬から差し引く、という形です。

これは法律上当然にそうなるものではなく、店が契約や慣行で作った仕組みです。

作った仕組みである以上、法令の制限を受けます。

売掛金を従業員に負わせることは18条の2で禁止

風営法には、接客従業者を守るための規定が置かれています。

18条の2で、見出しは「接客従業者に対する拘束的行為の規制」です。

禁止されているのは2つです。

キャバクラの売掛の回収を縛る3本の条文を並べた図。風営法18条の2第1項1号の不相当に高額な債務、2号の旅券・運転免許証の保管、22条の2第1号の威迫して困惑させる行為、そして労働基準法24条1項の全額払い
罰則が付いているのは22条の2だけです。

1号|辞めたら即完済という条件つきの高額債務

一 営業所で客に接する業務に従事する者(以下「接客従業者」という。)に対し、接客従業者でなくなつた場合には直ちに残存する債務を完済することを条件として、その支払能力に照らし不相当に高額の債務……を負担させること。

風営法 第18条の2第1項1号

ポイントは2つあります。

辞めたら直ちに完済させるという条件がついていること、そして支払能力に照らして不相当に高額であることです。

売掛を積み上げたうえで「辞めるなら今すぐ全額」と迫る形は、この条文が正面から想定している場面です。

括弧書きで、利息制限法その他の法令により全部または一部が無効とされるものも含むとされています。

2号|旅券や免許証を預かることの禁止

二 その支払能力に照らし不相当に高額の債務を負担させた接客従業者の旅券等(……旅券、道路交通法第九十二条第一項の運転免許証その他求人者が求職者の本人確認のため通常提示を求める書類として政令で定めるものをいう。……)を保管し、又は第三者に保管させること。

風営法 第18条の2第1項2号

対象にパスポートだけでなく運転免許証も明記されています。

「返してもらうまで免許証を預かる」という運用は、ここに当たります。

第三者に保管させることも同じ扱いです。

なおこの規定は、法33条6項により深夜酒類提供飲食店営業を営む者にも準用されます。

同じ18条の2の2項は、紹介業者の側に疑いがあると認められるときの防止措置を店に求めています。スカウトへの支払いがどの法律に触れるかはスカウトバックは違法かで整理しました。

2025年の改正で売掛金の回収方法が罰則つきで規制された

ここが新しい部分です。

悪質なホストクラブの問題を背景に、令和7年11月28日までに全面施行された改正で22条の2が新設されました。

回収の方法そのものを規制する条文です。

1号|支払わせる目的で威迫して困惑させること

一 客に注文等をさせ、又は当該営業に係る料金の支払……に係る債務の弁済……をさせる目的で、当該客を威迫して困惑させること。

風営法 第22条の2第1号

対象は客です。

売掛の回収で客を追い込む行為が、正面から禁止されました。

罰則は法53条2号で、6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、併科もあります。

2号|売春や性風俗店での稼働を求めること

2号は、支払いの原資を作らせる行為を禁じています。

威迫または誘惑して、料金の支払いのために金銭を得ることを要求する行為です。

条文は、売春防止法その他の法令に違反する行為、性風俗店での就業、性行為映像制作物への出演、外国での売春を列挙しています。

いずれも1号と同じ罰則です。

18条の3の3号も回収に関わる

同じ改正で入った18条の3も、売掛が膨らむ入口を規制しています。

客が注文の意思表示をする前に飲食等を提供して困惑させ、それによって飲食させる行為が禁じられました。

注文を取らずにボトルを入れる運用は、売掛の原因そのものになります。

料金の表示と説明のルールは風営法の料金表示にまとめました。

売掛金を給与から天引きすると労働基準法にも触れる

風営法とは別に、労働基準法の側からも制限がかかります。

キャストが労働者に当たる場合の話です。

関係する条文は3つあります。

24条|賃金は全額払い

労基法24条1項は、賃金を通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならないとしています。

売掛を報酬から差し引く形は、この全額払いの原則に抵触します。

控除できるのは、法令に定めがある場合か、労使協定がある場合に限られます。

手渡しの店で抜けやすい点はスナックの給料手渡しで扱っています。

16条|違約金や損害賠償額の予定は禁止

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

労働基準法 第16条

「売掛が回収できなければ本人負担」とあらかじめ決めておく形は、損害賠償額の予定に近づきます。

遅刻や欠勤に一定額の罰金を科す定めも、同じ条文の問題です。

17条|前借金と賃金の相殺は禁止

使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

労働基準法 第17条

貸すこと自体が禁止されているのではなく、賃金と相殺することが禁止されています。

立て替えた売掛を給与から引く運用は、この構造に当てはまりやすくなります。

16条・17条の違反は、労基法119条1号により6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。

なお、キャストが労働者に当たるかどうかは契約書ではなく実態で決まります。

裁判例で結論が分かれた境目はキャバクラの業務委託は可能かにまとめました。

売掛金を残さない設計にするしかない

ここまでを踏まえると、打てる手は限られます。

回収の方法を工夫するより、売掛を作らない設計にするほうが確実です。

条文に触れずに残された選択肢を並べます。

  • 料金を注文前に示す|施行規則33条の3通りのいずれかで、名義を問わず全部を表示する
  • 注文を取ってから出す|18条の3第3号に触れないよう、提供の順番を変える
  • その場決済の手段を増やす|現金以外の決済を用意して、後払いの理由をなくす
  • 売掛の上限と期限を店の基準として持つ|キャストの判断で伸ばせない形にする
  • 回収は店が客に対して行う|キャストに負わせない。督促は威迫にならない方法で

客に対する債権の回収そのものは、民事の手続きで進めることになります。

金額が大きい場合は、弁護士に相談して支払督促や訴訟を検討してください。

まとめ|売掛金の扱いで外さない点

この記事の要点をまとめます。

  • 売掛は店と客の債権。キャストに負わせるのは店が作った仕組みで、法令の制限を受ける
  • 辞めたら即完済という条件つきの高額債務は禁止(風営法18条の2第1項1号)
  • 旅券や運転免許証を預かることも禁止(同2号)。深夜酒類提供の店にも準用される
  • 威迫して支払わせることは罰則つきで禁止(22条の2第1号、53条2号で6月以下または100万円以下)
  • 支払いのために売春等を求めることも禁止(同2号)
  • 給与からの天引きは全額払いに触れる(労基法24条1項)
  • 事前に本人負担と決めるのは16条、相殺は17条。違反は6月以下または30万円以下(119条1号)

いま売掛の運用がある店は、まず「キャストの報酬から引いていないか」を確かめるところからです。

18条の2がかかるのは接待飲食等営業です。自分の店の区分は風営法の許可4種類で確認できます。

客へのツケの時効と請求書の書き方はスナックの請求書の書き方で扱っています。

歩合で払う場合の最低賃金と割増の扱いは歩合給と最低賃金にまとめました。

売掛の処理は調査で必ず見られます(キャバクラの税務調査)。

売掛を理由に退職者の賃金を止められない点は従業員が辞めたときの手続きで扱っています。

回収の場面で起きる威迫はスナックのカスハラ対策でも扱っています。

キャストへの支払いは課税仕入れになります(インボイスの経過措置)。

他の客のボトルに手を付けると業務上横領になります(ボトルキープの期限と紛失)。

この記事は条文をもとにした一般的な整理です。

個別の運用が禁止行為に当たるかや、実際の回収方法については、弁護士や所轄の警察署(生活安全課)に確認してください。

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