警察が入ってきたとき、どこまで見せる義務があるのかが分からず身構えてしまう。
ここを知らないまま応対すると、断ったこと自体が罰則になります。
風営法の立入りは犯罪捜査ではありませんが、正当な理由なく拒めば100万円以下の罰金の対象になります。
条文が「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」とはっきり書いています。
そして立入りの対象は風俗営業の店だけではなく、深夜に営業している飲食店も含まれます。
この記事では、誰が対象で、どこまで入れるのか、何を見られるのか、拒んだときにどうなるのかを条文で整理します。
読み終えたら、立入りに備えて店に置いておくべき書類がどれかが分かります。
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風営法の立入検査は深夜営業の飲食店も対象
まず対象の範囲を確認します。
根拠は法37条で、1項が報告や資料の提出、2項が立入りです。
許可を取っている店に限られていない点が要です。
2項が挙げる7つの場所
法37条2項は、警察職員が立ち入ることができる場所を号で列挙しています。
1号が風俗営業の営業所、6号が深夜酒類提供飲食店営業の営業所です。
そして7号が、それ以外を拾っています。
七 前各号に掲げるもののほか、設備を設けて客に飲食をさせる営業の営業所(深夜において営業しているものに限る。)
風営法 第37条2項7号
届出をしていない普通の飲食店でも、深夜に営業していれば立入りの対象になります。
「うちは許可も届出もないから関係ない」とはなりません。
客が在室している個室には入れない
範囲には条文上の限界もあります。
法37条2項のただし書が、個室その他これに類する施設で客が在室するものについては立ち入ることができないとしています。
また3項により、立ち入るときは身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければなりません。
提示を求めること自体は、拒否ではなく確認です。
風営法の立入検査は犯罪捜査ではない
ここが誤解されやすいところです。
立入り=手入れ、と身構えてしまう店主は少なくありません。
しかし条文は、行政上の調査であることを明記しています。
法37条4項が明文で線を引いている
第二項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
風営法 第37条4項
目的は、法の施行に必要な限度での確認です。
1項も2項も「この法律の施行に必要な限度において」という枠がかかっています。
目的の範囲を超えた要求には応じる義務がない、という読み方ができます。
会計帳簿を求められる場合とそうでない場合
警察庁の解釈運用基準は、この限度について具体例を挙げています。
立入り等の行使は、法の施行に必要な限度で行い得るものであり、……したがって、犯罪捜査の目的や他の行政目的のために行うことはできず、例えば、経営状態の把握のために会計帳簿や経理書類等の提出を求めたり、保健衛生上の見地から調理場の検査を行ったりすること等は認められない。一方、接待飲食営業を営む風俗営業者が表示し、又は客に説明した料金と実際に請求された料金が異なることや、客が注文していないと主張する飲食等の実際の伝票処理状況等を確認するため、会計帳簿や経理書類等の提出を求めることは認められる。
警察庁 解釈運用基準(令和8年7月1日)第36の1(1)
同じ帳簿でも、目的によって扱いが分かれています。
経営状態を見るためなら認められず、料金表示や注文の有無を確かめるためなら認められる、という書き分けです。
後半は2025年の改正で入った18条の3と対応しています。
料金表示のルールは風営法の料金表示にまとめました。
立入検査で見られる書類
何を求められるかは、法が店に課している義務から逆算できます。
備え付けや掲示が義務になっているものが中心です。
どれも、その場で出せる状態にしておく必要があります。
義務から逆算した一覧
| 見られるもの | 根拠 |
|---|---|
| 従業者名簿 | 法36条。記載事項は内閣府令25条 |
| 接客従業者の生年月日等の確認記録 | 法36条の2。書類の写しを添付して保存 |
| 料金表 | 法17条。施行規則33条の方法で表示 |
| 営業所の構造・設備 | 図面との一致。変更は法9条の承認・届出 |
| 管理者の選任状況 | 法24条1項。営業所ごとに専任で1人 |
従業者名簿は施行規則107条により電子データでもよいとされています。
ただし条件は「必要に応じ……直ちに表示されることができるとき」なので、その場で画面に出せなければ意味がありません。
書く項目と保存期間は風営法の従業者名簿にまとめています。
図面と実際の内装が合っているか
書類以外で問題になりやすいのが内装です。
許可のときに提出した図面と、いまの店内が違っていれば無承認変更が疑われます。
パーテーションを1枚足しただけでも承認の対象になるので、改装のたびに手続きが要ります。
どこからが承認の対象かは風営法の変更承認で条文ごとに整理しました。
立入検査を拒んだときの罰則
行政調査とはいえ、拒否には罰則があります。
報告のほうと立入りのほうで、別の号に分かれています。
いずれも法54条で、100万円以下の罰金です。
拒み、妨げ、忌避したとき
次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、百万円以下の罰金に処する。
風営法 第54条
六 第三十七条第一項の規定に違反して、報告をせず、若しくは資料を提出せず、又は同項の報告若しくは資料の提出について虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出したとき。
七 第三十七条第二項……の規定による立入りを拒み、妨げ、又は忌避したとき。
6号は報告や資料についてで、虚偽の報告も同じ扱いです。
7号は立入りそのもので、拒むだけでなく「妨げ」「忌避」も対象になっています。
同じ54条3号に従業者名簿の不備も置かれているので、名簿が無い状態で立入りを受けると複数の号に触れることになります。
2025年の改正で「処分逃れ」も封じられた
立入りのあとの行動にも規制が入りました。
2025年の改正で、法4条1項8号ロが追加されています。
立入りが行われた日から聴聞決定予定日までの間に許可証を返納した者は、返納の日から5年を経過するまで欠格になります。
処分が出る前に廃業して逃れる、という形が封じられたことになります。
この欠格は管理者にも及びます(法24条2項2号)。
まとめ|風営法の立入検査で外さない点
この記事の要点をまとめます。
- 対象は深夜営業の飲食店まで。許可も届出もない店でも、深夜に営業していれば入られる(法37条2項7号)
- 犯罪捜査ではない。条文が明文で線を引いている(法37条4項)
- 客が在室する個室には入れない。立入りには証明書の携帯と提示が要る(法37条2項ただし書・3項)
- 会計帳簿は目的しだい。経営状態の把握なら認められず、料金や注文の確認なら認められる
- 見られるのは義務の裏返し。従業者名簿、確認記録、料金表、図面との一致、管理者の選任
- 拒否は100万円以下の罰金。虚偽報告も同じ(法54条6号・7号)
- 立入り後の許可証返納は5年の欠格。2025年の改正で追加された(法4条1項8号ロ)
備えとしては、名簿と確認記録と料金表を、その場で出せる場所にまとめておくことです。
立入りの対象は営業の区分で変わるため、風営法の許可4種類もあわせて確認してください。
立入りで見られる名簿の様式は従業者名簿テンプレートから用意できます。
保健所の立入検査については既存特定飲食提供施設の3要件で扱っています。
立入りの後に何が来るかはガールズバーの摘発で整理しています。
この記事は条文と警察庁の通達をもとにした一般的な整理です。
実際の立入りでの対応に迷う場合は、その場で争わず、後日に所轄の警察署(生活安全課)や風営法に詳しい行政書士・弁護士へ相談してください。
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この記事で参照した一次情報
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(4条1項8号・9条・17条・24条・36条・36条の2・37条・54条)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則(33条・107条)
- 警察庁 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について(令和8年7月1日付)(第36 報告及び立入りについて)

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