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シフトを入れないのは解雇?雇止めと解雇予告のルール

シフト制の解雇と雇止めで踏むべき手続を条文で解説する記事のアイキャッチ

辞めてほしい人を、シフトに入れないことで自然に離れてもらおうとしている。

角が立たないやり方に見えて、実は契約が続いたままの状態です。

シフトを入れないこと自体は、解雇の手続を踏んだことになりません。

契約は続いたままなので、店の義務も残ります。

ただし「入れなければ自然に辞めてもらえる」わけでもなく、違法になる場面が3つあります。

そしてきちんと辞めてもらう場合は、30日前の予告か30日分の平均賃金が必要です。

この記事では、シフト制・時給制の平均賃金を計算するときに見落とされる労働基準法12条の最低保障まで、実額で確かめます。

読み終えたら、辞めてもらうときに必要な予告と金額を、正しい計算で出せます。

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目次

シフトを入れないことが解雇と同じになる3つの場面

先に、いちばん知りたいところから書きます。

シフトを入れないこと自体を直接禁じた条文はありません。

ただし次の3つに当たると、別の条文で違法になります。

①確定したシフトを取り消した

いったん出したシフトを店の都合で消した場合です。

厚生労働省の留意事項は、確定後の変更を労働条件の変更に当たるとしたうえで、使用者の責に帰すべき事由で休ませたなら平均賃金の6割以上の休業手当が必要としています(労働基準法26条)。

「客が少なそうだから」は経営上の判断で、不可抗力の要件を満たしません。

詳しくはシフトの一方的な変更は違法?にまとめました。

②契約で日数の目安を決めていた

ここは見落とされがちです。

留意事項は、シフト制の契約であらかじめ取り決めておくことが望まれる事項として、次のような例を挙げています。

一定の期間において、目安となる労働日数、労働時間数(例:「1か月○日程度勤務」、「1週間当たり平均○時間勤務」など)……これらに併せる等して、一定の期間において最低限労働する日数、時間数などについて定めることも考えられます(例:「1か月○日以上勤務」、「少なくとも毎週月曜日はシフトに入る」など)

厚生労働省 いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項(令和8年6月19日改正)

こうした取り決めをしていれば、それは労働契約の内容です。

「月10日程度」と約束しておいて2日しか入れないのは、契約を守っていない状態になります。

逆に何も決めていなければ争点が「合意はあったか」からになり、双方にとって長引く形になります。

③実質的に辞めさせている

戻すつもりがないのにシフトを空け続けているなら、実態としては辞めさせているのと同じです。

留意事項も趣旨の部分で、使用者の都合により労働日がほとんど設定されないことを労働紛争の典型として挙げています。

この場合、解雇や雇止めのルール(後述)を守っていないことになります。

あいまいにしたまま自然消滅を狙うのがいちばん高くつく進め方です。

解雇と雇止めは契約の形ごとに手続が違う

では正面から辞めてもらう場合です。

期間の定めがあるかどうかで、根拠も難易度も変わります。

状況踏む手続根拠
有期契約の期間の途中で辞めさせるやむを得ない事由が必要(無期の解雇より厳しい)労契法17条1項
期間の定めがない契約で解雇する合理的な理由と社会通念上の相当性。欠けば無効労契法16条
解雇するときの手続(上記に共通)30日前の予告、または30日分以上の平均賃金労基法20条1項
有期契約を更新しない(雇止め)19条に当たる場合は制限あり。3回以上更新か1年超なら30日前に予告労契法19条・雇止め基準2条

無効になれば賃金をさかのぼって払う話になる

労契法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。

無効なら契約は続いていたことになり、その間の賃金をさかのぼって払う話につながります。

予告を省ける例外は監督署長の認定が要る

労基法20条1項ただし書に予告が要らない例外が2つありますが、そのうち「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」は労働基準監督署長の認定が要る手続です。

店の判断だけで使えるものではありません。

20条違反には罰則もあります(労基法119条1号・6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)。

シフト制の平均賃金は最低保障で計算する

ここがこの記事のいちばん実務的な部分です。

解雇予告手当も休業手当も、平均賃金がもとになります。

そしてシフト制・時給制は、原則の式だけで出すと必ず低く出ます。

シフト制の平均賃金を原則の式と最低保障で計算し比べた図。時給1,500円週3日の例で原則は30日分104,918円、最低保障は148,500円で43,582円の差が出る
高いほうが平均賃金です。原則の式だけだと4万3千円ほど足りません。

原則の式と、下回ってはいけない最低保障

労働基準法12条1項は、平均賃金を「算定すべき事由の発生した日以前3か月間に……支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」としています。

総日数なので、働いていない日も分母に入ります。

そのままだと、週3日しか入らない人の平均賃金が極端に低くなります。

そこで同項ただし書が最低保障を置いています。

賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され……た場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十

労働基準法 第12条1項1号

時給制はここに当たります。

原則の式と最低保障の両方を出して、高いほうが平均賃金です。

時給1,500円・週3日で計算するといくらか

19時から24時まで、週3日入っているキャストを例にします。

22時以降は深夜割増がつくので、1日の賃金は3時間×1,500円+2時間×1,875円=8,250円です。

3か月で39日、賃金総額は321,750円。

期間の総日数は92日とします。

計算1日あたり30日分
原則(12条1項本文)321,750円 ÷ 92日3,497円104,918円
最低保障(1項1号)321,750円 ÷ 39日 × 60%4,950円148,500円
高いほうが平均賃金。差額43,582円

原則の式だけで解雇予告手当を払うと、1人あたり4万3千円ほど足りません。

休業手当(平均賃金の6割)でも同じずれが起きるので、シフトを減らした日ごとに効いてきます。

深夜割増を含む割増賃金も「賃金の総額」に入ります。

夜のお店は深夜帯の割増が乗るぶん、平均賃金も上がります。

割増の数え方は深夜手当の計算方法にまとめました。

3か月の数え方で間違えやすいところ

同じ12条に、期間の取り方の決まりもあります。

ここを外すと金額がずれます。

  • 賃金締切日があるときは直前の締切日から起算する(12条2項)。事由が起きた日から3か月ではない
  • 次の期間は日数も賃金も除く(12条3項)… 業務上の負傷・疾病による休業、産前産後の休業、使用者の責に帰すべき事由による休業、育児介護休業、試みの使用期間
  • 臨時に支払われた賃金と、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は総額に入れない(12条4項)
  • 雇入れから3か月に満たない人は、雇入れ後の期間で計算する(12条6項)

3つめは、入店して間もない人を辞めさせるときに効きます。

2か月しか働いていないなら、その2か月で計算します。

更新しない場合の雇止めにも制限がある

有期契約を更新せずに終わらせる場合も、労働契約法19条の制限がかかります。

次のどちらかに当たり、更新を拒むことが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められないときは、従前と同じ労働条件で更新したものとみなされます。

  • 1号 … 反復して更新されていて、更新しないことが解雇と社会通念上同視できると認められること
  • 2号 … 労働者が更新されると期待することについて合理的な理由があると認められること

3回以上更新か1年超なら30日前に予告

そのうえで予告も要ります。

留意事項は「有期労働契約が3回以上更新されているか、雇入れの日から1年を超えて継続勤務している有期契約労働者について……少なくとも契約の満了する日の30日前までに、その旨の予告を行うことが必要です」としています(有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準第2条)。

夜のお店は契約書自体を交わしていないことも多く、その場合は期間の定めがない契約として扱われるのが通常です。

書式は雇用契約書のテンプレートと労働条件通知書のテンプレートを配布しています。

夜の店で起きやすい解雇・雇止めの場面

実際に相談になりやすい場面を並べます。

共通するのは、口頭で流したぶんだけ後で高くつくということです。

場面扱い
体調不良で数日休んだら、その後シフトが入らなくなった戻す意思がないなら実質的な解雇・雇止め。手続が要る
客とのトラブル後に「しばらく休んで」と伝えた確定シフトを外したなら休業手当の検討。戻す時期を決めて伝える
「来なくていい」と口頭で言った解雇の意思表示と受け取られうる。30日前の予告か30日分の平均賃金
本人が来なくなったまま連絡がつかない自動的に退職にはならない。契約終了の手続と最終給与の支払を進める
店を閉めることにした廃業でも解雇。予告か予告手当が要る

店をたたむ場合でも解雇にあたる

最後の行は見落とされがちです。

店をたたむ場合でも解雇であることに変わりはなく、天災事変などで事業の継続が不可能になった場合を除いて予告の義務は残ります。

どの場面でも平均賃金を出す必要があり、そのためには3か月分の賃金台帳が要ります。

保存期間は当分の間3年です(労基法109条・附則143条1項)。

記録の形は勤怠管理のエクセルテンプレート、有給が残っている場合はシフト制の有給休暇を見てください。

まとめ|シフト制の解雇と雇止めで外さない点

  1. シフトを入れないこと自体は解雇の手続にならない。契約は続いている
  2. 違法になるのは3つ。確定シフトの取消し/目安の日数を決めていた場合/実質的に辞めさせている場合
  3. 有期契約の期間途中の解雇は「やむを得ない事由」が必要(労契法17条1項)
  4. 無期契約の解雇は合理的理由と相当性を欠けば無効(労契法16条)
  5. 解雇には30日前の予告か30日分以上の平均賃金(労基法20条1項)。違反には罰則がある
  6. 「労働者の責に帰すべき事由」で予告を省くには監督署長の認定が要る
  7. 時給制の平均賃金は「総日数で割る」と「労働日数で割って60%」の高いほう(12条1項1号)
  8. 例では原則3,497円に対し最低保障4,950円。30日分で43,582円の差になる
  9. 締切日から起算する、雇入れ3か月未満は雇入れ後の期間で計算する(12条2項・6項)
  10. 雇止めも19条の制限がかかる。3回以上更新か1年超なら30日前に予告

解雇の事由を書いておく場所は就業規則です。作成義務の線引きは就業規則は10人未満でも必要かで扱っています。

雇用しているなら労災保険は業種も人数も問わず強制適用です(業務委託キャストの労災)。

辞めたあとの届出と期限は従業員が辞めたときの手続きにまとめています。

療養中と復帰後30日の解雇制限は労働者死傷病報告で扱っています。

この記事は条文と厚生労働省の公表資料をもとにした一般的な整理です。

平均賃金の計算は締切日や控除期間で変わり、解雇や雇止めが有効かどうかは経緯と実態で個別に判断されます。

実際に進める前に、社会保険労務士や弁護士、所轄の労働基準監督署に確認してください。

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